『君の好きは無敵』“瀬尾”佐野勇斗の1mmが生み出す魔法 藤井隆が作品に与える安心感
アンパンマンやキティちゃんを描こうとして、失敗した経験がある人は意外と多いのではないか。どちらの顔もシンプルなので簡単に描けそうに思えるが、実際は1mmでもパーツがズレるだけで、途端に偽物感が出てしまう。裏を返せば、それだけキャラクターをデザインする人たちは細部までこだわり抜いているということだ。
『君の好きは無敵』(TBS系)第3話では、同じく1mmも妥協しない瀬尾(佐野勇斗)の姿勢が周囲の人間を動かした。
背中を押すことも斜に構えることもなく「ただ支える」をコンセプトに、新たなキャラクターづくりに取りかかり始めた杏奈(松本若菜)と瀬尾。瀬尾がデザインを考える間、杏奈は完成したキャラクターのプロモーション戦略を立てる。近年、新規キャラクターのデビューは、LINEスタンプやネット上でのイラスト販売が主流だ。
しかし、杏奈はあえて瀬尾が大好きなぬいぐるみでデビューさせることに。その分野ならブルーオーシャンだし、何より常にそばに置いておけるぬいぐるみなら「ただ支える」というコンセプトに合っている。さっそく杏奈はグッズメーカーを駆け回り、地道な交渉の末に短納期かつ小ロットという厳しい条件に応じてくれる会社を見つけた。
それなのに、瀬尾は一向にデザインを始める様子もなくのらりくらり。挙句にはしょうもない遊びで突き指し、メーカーにデザインを提出する日が迫っているのにもかかわらず、ペンすらも持てない状態になってしまう。前回もクライアントからの依頼を放置し、契約を破談にした瀬尾。納期は守らないわ、大事な商売道具である指を怪我するわ、社会人としてはダメダメすぎる……!
一方で、杏奈もコンサルとしての役目は全うしていたとはいえ、十分に瀬尾の創作を支えられていたかといえば疑問が残る。コンセプトが固まっただけで満足し、デザインについては瀬尾に丸投げで、完成を急かすことしかしていなかった。杏奈はこれまでキャラクタービジネスとは無縁で、「かわいい」も「好き」もよくわかっていないので、仕方ないといえば仕方ない。
ただ、デザイナーの生みの苦しみにまで思いを巡らせようとせず、プレッシャーを与えてしまっていたことに、杏奈は自らペンを取ってみて初めて気づいた。さらにはピンチヒッターとして現れたMERRYのプランナー・廣瀬(藤井隆)が瀬尾のこだわりにひたすら寄り添う姿を目の当たりにし、「支える」とはどういうことかを身をもって学んだのではないだろうか。
かたやコンサルの仕事を軽んじていた瀬尾も、グッズメーカーとの打ち合わせがうまくいかず、その大変さを理解する。2人に圧倒的に足りなかったのは、お互いを知ることだ。
不器用ながらも瀬尾から杏奈を誘う形で、2人は初めて打ち合わせがてら一緒に食事をすることに。そこで杏奈はデザインのヒントになればと、幼少期のちょっぴり切ないエピソードを瀬尾に語り聞かせた。すると、瀬尾は突然雷に打たれたかのように表情を変え、一気に創作モードへと入る。その過程で自分のこだわりと締め切りとの間で葛藤する瀬尾の姿を見て、杏奈の「支えるモード」にもスイッチが入った。もちろん、納期を守るのは社会人として何よりも優先すべきこと。それでも、杏奈は瀬尾の譲れないこだわりが多くの「好き」を生み出し、誰かを一生涯支える可能性に懸けたのである。
アイデアが舞い降りてくるのも、人が恋に落ちるのも、雷が落ちる時と同じく突然だ。杏奈の幼少期のエピソードをヒントに瀬尾が生み出したのは、まるでバレリーナのチュチュを履いたようなライオンのキャラクター。温かみがあって今にも動き出しそうな躍動感を持ったその子に杏奈はハートを射抜かれ、人生初めての「好き」に出会う。きっと画面の向こうでも、多くの人が杏奈と同じように思わず「好き」と口にしていたのではないだろうか。名前すらもまだないその子が番組オリジナルグッズになる日が今から楽しみで仕方がない。
楽しみといえば、もう一つワクワクする展開があった。久しぶりに瀬尾と仕事をし、その一切妥協しない姿勢に感化された廣瀬は、こだわりよりも目先の利益を優先する社長の大三島(本郷奏多)に勇気を出して直訴する。しかし、「1mmなんて誰も気づきませんよ」「どうせいつか消えるのですから」と廣瀬の訴えを退ける大三島。そんなキャラクタービジネスに携わる者としてあまりに寂しい発言で、どこか盲目的に自社を愛していた廣瀬もついに目が覚めたようだ。長年勤めたMERRYを離れた廣瀬がもし杏奈と瀬尾の仲間になってくれたら、これほど心強いことはない。3人の「好き」のパワーが集まれば、きっと瀬尾が生み出したあの子はどこまでも羽ばたけるはずだ。
■放送情報
火曜ドラマ『君の好きは無敵』
TBS系にて、毎週火曜22:00〜22:57放送
出演:松本若菜、佐野勇斗、小野花梨、金田哲(はんにゃ.)、中村隼人、白本彩奈、島崎和歌子、藤井隆
声の出演:あの(シニカルモルコ役)
脚本:宮本武史
演出:竹村謙太郎、府川亮介、渡部篤史、尾本克宏ほか
主題歌:星野源
プロデューサー:岩崎愛奈
協力プロデューサー:小髙夏実
編成:吉藤芽衣
取材協力:株式会社サンリオ
製作:TBSスパークル、TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/kiminosukihamuteki_tbs/
公式X(旧Twitter):@kiminosuki_tbs