『キングダム 魂の決戦』の“原作再現度”は? 絶賛の“ファルファル”、脚色部分を分析
映画『キングダム』シリーズ5作目となる『キングダム 魂の決戦』が公開され、公開4日間で興行収入20.6億円、観客動員131万人を突破する好スタートを切った。シリーズ累計興収は300億円に迫る勢いで、今年公開の実写映画トップの滑り出しとなっている。
本作では、原作屈指の人気エピソード「合従軍編」がついに幕を開け、秦へ六国が同時侵攻する未曾有の戦いが描かれた。一方で、長編エピソードの序章という位置づけでもあるため、新たに登場した武将たちの再現度や原作から変更された描写にも大きな注目が集まっている。
公開直後から最も大きな反響を呼んだのが、要潤演じる騰だ。原作ファンが気になっていたのは、代名詞とも言える超高速の剣技がどのように実写化されるのかという点だった。漫画では「ファルファル」という独特の擬音とともに円を描くように剣を回転させながら敵を切り刻んでいくのだが、映画では騎馬で体を傾けながら敵陣へ突入。すれ違いざまに斬り伏せていくスピード感あふれるアクションによって、その世界観をみごとに再現していた。音は聞こえずとも、観客の頭の中には「ファルファル」の効果音が鳴り響いたことだろう。さらに、楚将・臨武君(一ノ瀬ワタル)との一騎打ちでは、神速の斬撃を数秒間にわたって食らわせ続け、ネット上では「想像以上だった」「ちゃんとファルファルになっていた」「原作よりパワーアップしてない?」といった声が飛び交った。1作目から河了貂として出演している橋本環奈がインタビューにて、「現場でも『ファルファル、うらやましい』なんて話になるんです」「結局ファルファルに全部持っていかれてしまう」(※)と語っていたとおり、本作屈指の名シーンとなった。
一方、公開前から賛否が分かれていたのが、田中圭演じる魏国総大将・呉鳳明だった。原作では若き天才のイケメンキャラとして描かれており、キャスト発表時には「イメージが違う」「もう少し若い俳優を想像していた」といった声も少なくなかった。公開後も「田中圭にしか見えなかった」という感想は一定数見受けられたが、落ち着いた口調や堂々とした立ち居振る舞いを評価する声も聞かれる。ただ、原作では合従軍を率いる李牧(小栗旬)へ「この戦どこまでやるおつもりか」と問いかけて存在感を放つが、映画ではこのセリフは趙将・万極(山田裕貴)へと置き換えられたことで、やや薄味に。魏軍の見せ場が持ち越しとなったこともあり、田中の“知将”演技の真価が問われるのは、次回作となりそうだ。
一方、短い登場時間ながら原作ファンを大いに納得させたのが谷田歩演じる秦将・王翦である。特徴的な仮面に覆われて素顔は明かされず、セリフもない。しかし、その鋭い眼光だけで王翦という人物の底知れなさを表現し、「ギョロ目の再現度が高すぎ」「目力だけで王翦そのものだった」といった感想が飛び交っている。谷田は、同じ山﨑賢人主演、佐藤信介監督によるNetflixシリーズ『今際の国のアリス』で、圧倒的な戦闘力を誇る“スペードのキング”を演じたことでも知られる。寡黙な役柄でありながら、視線一つで相手を圧倒する存在感は同作でも高く評価されたが、王翦もまた感情をほとんど表に出さず、その真意が読めない武将。派手な芝居に頼ることなく、その佇まいだけで人物像を成立させた演技は、本作でも“さすが”の一言だった。
もう一つ印象的だったのが、山田裕貴演じる趙国の将軍・万極と、その軍勢の演出だ。万極軍は、かつて秦国の白起将軍による「長平の戦い」で生き埋めにされた趙兵の遺児で構成され、その怨念を背負う存在として描かれている。劇中では、兵士たちは何度斬られても痛みを感じないかのように無表情で立ち上がり、執拗に敵へと這い寄り、背後にしがみつく姿は、まるでゾンビ映画さながらの異様な迫力。原作以上のホラー描写で兵士たちの怨念やトラウマが存分に伝わり、信(山﨑賢人)と万極の一騎打ちの重みが増したように思う。
もちろん、長大な「合従軍編」を一本の映画へ収める以上、省略や変更も少なくない。各国の武将を掘り下げる時間も限られており、ファンからは「あのシーンも見たかった」という声も聞かれるが、それだけ原作のスケールが大きい証左。だからこそ、続編では今回顔見せにとどまった武将たちがどのような活躍を見せるのか、期待はますます高まるばかりだ。
参照
※ https://www.nack5.co.jp/oricon/2468803/
■公開情報
『キングダム 魂の決戦』
全国公開中
出演:山﨑賢人、吉沢亮、橋本環奈、清野菜名、満島真之介、岡山天音、志尊淳、神尾楓珠、結木滉星、三吉彩花、三山凌輝、山下美月、蒔田彩珠、山田裕貴、坂口憲二、豊川悦司、髙嶋政宏、要潤、加藤雅也、高橋光臣、平山祐介、一ノ瀬ワタル、佐久間由衣、勝矢、坂東彌十郎、橋本さとし、笹野高史、谷田歩、中村蒼、田中圭、斎藤工、玉木宏、佐藤浩市、小栗旬
原作:原泰久『キングダム』(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
監督:佐藤信介
脚本:黒岩勉、原泰久
音楽:やまだ豊
主題歌:米津玄師「夜鷹」(Sony Music Labels Inc.)
配給:東宝
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