『口に関するアンケート』の“恐怖の本質”を読み解く 清水崇監督の長所が発揮された作品に
手のひらサイズの変則的な装丁と、短いボリュームのなかに仕掛けられた恐怖が、SNSを中心に大きな話題を呼んだ、背筋のホラー小説『口に関するアンケート』。数人の若者を中心に、不可解な証言をめぐるストーリーが展開されていく。このコンセプチュアルな作品が実写映画版『口に関するアンケート』として劇場公開された。
一見すると本作は、心霊スポットを訪れた若者たちの肝試しと、その後に起こる不可解な失踪事件を描いた、職人的な王道ホラーとして観ることもできる。しかし書籍版と同様に、映画ならではのかたちでコンセプチュアルな構造を獲得する試みをとっていることで、やや難解に感じられる部分もあるかもしれない。ここでは、本作が提示する恐怖の本質について読み解いていきたい。
※本記事では、『口に関するアンケート』のストーリーの核心についての記述があります
背筋原作の映画化としては、すでに白石晃士監督による『近畿地方のある場所について』(2025年)が公開されている。虚構が現実に染み出してくるような感覚を持った『近畿地方のある場所について』だけに、白石監督が得意とするフェイクドキュメンタリーの特性が活かされていた。
これに対して、今回の『口に関するアンケート』で監督を務めたのは、かつて世界的な「Jホラー」ブームの立役者となり、複数のヒットシリーズを世に送り出してきた清水崇監督である。本作は、清水監督ならではの豊かで突飛な発想や、生理的な不気味さを生み出す演出、そして物語のテンションが高まるにつれて広がっていった恐怖が、最終的に一点へと鮮やかに収束していく感覚など、ホラー演出家、クリエイターとしての長所が発揮された作品なのだ。
清水作品のファンが喜ぶような演出も随所にちりばめられている。複数の証言者を映し出す際の不気味な字幕や、一見ただの不可解な自然現象に思えたものが、じつは目に見えない首吊り死体が空間で揺れていることで生み出されていたというケレン味ある演出は、一種のセルフパロディに近いニュアンスさえ漂わせる。こうした独自の演出は、不穏な物語に清水監督ならではの作家性をもたらしている。また、不気味に首の長い人物といった、現代にチューニングされた、ある種の「ろくろ首」の描写も見どころだ。
ある大学生グループが肝試しとして、心霊スポットとして知られる、墓地の“呪われた木”を訪れる場面から、本作の怪異は本格的に描かれ始める。それ以来、その夜に墓地を訪れた学生たちの周囲で不可解な現象が頻発。グループの1人が姿を消し、残された者たちも追いつめられていく。学生の行方を追う刑事は、残された者たちの証言を聞いていくが、語られる不可解な体験談は微妙に食い違い、事態は混迷を極める。