東宝特撮の名作がNetflixで“新生” 『ガス人間』と『ガス人間第一号』の共通点と相違点
片山監督の演出も、意外なまでの娯楽色とともに持ち前のシニカルな作家性を発揮。都知事選を背景にした後半の劇的展開もおおいに盛り上げている(香港の雨傘運動を揶揄するような描写にはさすがに「?」となったが)。場面によってダサくも、逆説的にも、ド直球のラブソングにも聞こえるサザンオールスターズ「いとしのエリー」の多彩な使い方も巧みだ。俳優陣の怪演を引き出す演出スタイルは、助監督時代に『TOKYO!』(2008年)、『母なる証明』(2009年)で組んだポン・ジュノ監督の影響だろうか? 今回はわりと控えめだが、『さがす』ぐらいポン・ジュノ愛全開でやってくれてもいいと思う。
魔法のランプの精霊のごとき超人的活躍を繰り返すガス人間のキャラクターは、オリジナル版の土屋嘉男とはだいぶ異なる設定ながら、哀切さは健在。もともとの人格を失い、かろうじてこびりついた記憶の断片だけで行動を保つかのような設定は、湯浅政明監督のTVアニメシリーズ『カイバ』(2008年)も思いださせる。タイトルロールを演じるUTAは、本木雅弘と内田也哉子を両親に持つ期待の新人だが、俳優デビュー作ならではの匿名性が絶大な効果を発揮している。父親の主演作『黒牢城』(2026年)と同時期リリースとなったのも感慨深い。『ゴジラ-1.0』(2023年)でアカデミー視覚効果賞を獲得した白組によるダイナミックなVFXも見どころだ。
現在、Netflixでは原典たる『ガス人間第一号』も同時配信されているので、ぜひ『地獄が呼んでいる』などのヨン・サンホ関連作と併せて楽しんでほしい。また、現代と過去の悲劇を直結させる社会派ホラーとして、高橋洋が脚本を手がけた韓国映画『オクス駅お化け』(2023年)もオススメだ。
■配信情報
Netflixシリーズ『ガス人間』
Netflixにて世界独占配信中
出演:小栗旬、蒼井優、広瀬すず、林遣都、UTA、芋生悠、伊島空、こばやし元樹、古館寛治、川瀬陽太、野村周平、中島歩、斉藤柚奈、柊木陽太、三河悠冴、松浦祐也、モーリー・ロバートソン、吉原光夫、三石琴乃、近藤芳正、和田光沙、髙嶋政宏、賀来賢人、森川葵、原日出子、中野英雄、夏川結衣、酒向芳、ピエール瀧、岡部たかし、青木崇高、竹野内豊
監督:片山慎三
脚本:ヨン・サンホ、リュ・ヨンジェ
原作:『ガス人間第一号』(監督:本多猪四郎/脚本:木村武)
エグゼクティブ・プロデューサー:ヨン・サンホ、市川南、大田圭二、臼井央、佐藤善宏(Netflix)
企画・プロデュース:馮年、呉良次
プロデューサー:小野田壮吉、ヤン・ユミン
企画:山内章弘
VFX:白組
VFXスーパーバイザー:髙橋正紀、新堀巧
企画・製作:東宝
共同企画・制作:WOWPOINT
制作プロダクション:TOHOスタジオ
配信:Netflix
作品ページ:https://www.netflix.com/title/81714240