エンドロールまで気づかない視聴者続出? 竹野内豊、『ガス人間』で別人級の変貌

 近年の竹野内は、そうした当時の魅力をスマートに熟成させ、日本を代表する「イケおじ」としての地位を不動のものにしてきた。年齢を重ねるごとに深みを増す渋さと、大人の余裕を感じさせる装いは、作品に絶対的な安心感をもたらす。

 直近の出演作である映画『雪風 YUKIKAZE』(2025年)でも、その持ち味が遺憾なく発揮されていた。実在した伝説の駆逐艦の艦長を演じた竹野内は、スクリーンに登場した瞬間から、言葉に頼らずとも周囲に安心感を与える確かな信頼感を表現。寡黙ながらも部下を静かに見守るその背中は、近年の彼がまとうような、実直な大人の男のイメージを体現するものだった。

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 一方で、そうした「完璧な格好良さ」だけではない、人懐っこさで視聴者を魅了したのが『義母と娘のブルース』(TBS系)シリーズだ。彼が演じた宮本良一は、底抜けに明るく、どこかトボけていて、家族を優しく包み込む最高の父親だった。二枚目俳優としての殻を破った、あの温かさとチャーミングな笑顔は、近年における彼のもう一つの大きな足跡である。

 もちろん、これまでにもパブリックイメージを裏切る挑戦がなかったわけではない。映画『孤狼の血』で演じたヤクザの若頭・野崎康介役などはその筆頭だろう。出番こそ多くなかったものの、呉弁を荒々しく操り、凄みを利かせる泥臭いキャラクターは、強烈なインパクトを残し、映画ファンに新鮮な驚きを与えた。

 しかし、今回の『ガス人間』がもたらした衝撃は、そんな過去の変貌すらも生ぬるく思えるほど、文字通り桁違いだったのである。

 警察で岡本に取り調べを受けるシーンでは、舌を出し、目を寄せて徹底的に相手を挑発する。それだけではない。語尾をわずかに引き伸ばしながら、相手を値踏みするような視線を送り、挑発そのものを愉しんでいることが伝わってくる。そこにあるのは、格好良さとは対極にある、観る者に不快感を抱かせるような醜悪さだ。エンドロールを見るまで竹野内豊だと気付かなかったという視聴者がいたとしても、決して不思議ではない。

 これまで築き上げてきた洗練されたイメージを捨て去り、ドブネズミのような卑屈さと狡猾さで画面を侵食していく竹野内豊。これまでのキャリアに対する最高に贅沢な“裏切り”であり、鮮やかな新境地を開拓した。

 思えば 『新感染 ファイナル・エクスプレス』や『地獄が呼んでいる』がそうであったように、ヨン・サンホが描くディストピアのおもしろさは、モンスターそのものよりも『人間の醜悪さ』によく表れている。彼が放つその地べたを這うような生々しさこそが、ヨン・サンホが描くディストピアを、真に完成させるピースだったのかもしれない。

■配信情報
Netflixシリーズ『ガス人間』
Netflixにて世界独占配信中
出演:小栗旬、蒼井優、広瀬すず、林遣都、UTA、芋生悠、伊島空、こばやし元樹、古館寛治、川瀬陽太、野村周平、中島歩、斉藤柚奈、柊木陽太、三河悠冴、松浦祐也、モーリー・ロバートソン、吉原光夫、三石琴乃、近藤芳正、和田光沙、髙嶋政宏、賀来賢人、森川葵、原日出子、中野英雄、夏川結衣、酒向芳、ピエール瀧、岡部たかし、青木崇高、竹野内豊
監督:片山慎三
脚本:ヨン・サンホ、リュ・ヨンジェ
原作:『ガス人間第一号』(監督:本多猪四郎/脚本:木村武)
エグゼクティブ・プロデューサー:ヨン・サンホ、市川南、大田圭二、臼井央、佐藤善宏(Netflix)
企画・プロデュース:馮年、呉良次
プロデューサー:小野田壮吉、ヤン・ユミン
企画:山内章弘
VFX:白組
VFXスーパーバイザー:髙橋正紀、新堀巧
企画・製作:東宝
共同企画・制作:WOWPOINT
制作プロダクション:TOHOスタジオ
配信:Netflix
作品ページ:https://www.netflix.com/title/81714240

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