STARGLOW 日穏、桜井日奈子の足の速さに驚き 初共演の印象と『死神バーバー』撮影秘話
「エンタメは人の心に深く記憶させる力がある」
ーー漠然とした勝手なイメージですが、美帆の強がるけれど繊細な部分は、桜井さんご自身のパーソナルなイメージや、カッコいい姿とも重なるように感じました。演じているご自身と近かったですか?
桜井:近かったと思います。美帆は一生懸命強がっていて、本当は傷つきやすかったり、繊細なところがある。自分の弱いところをあまり見せたくないという気持ちは、私にもすごく分かります。私も本当は、人にそういう部分を見せるのが怖いんです。こういう仕事をしているから「平気そう」と思われがちですが、根はすごくネガティブですし、喋らなくていいなら静かにしていたいタイプで。だから、簡単に人に心を打ち明けたりしないところは、美帆に近いなと思います。
ーー美帆のお母さん役の美保純さんもあまりにも自然でした。
桜井:自然でしたよね。私自身も本当にビックリしたのですが、事前にお互いで親子の関係性をディスカッションしたりは全くしていないんです。まるで本物のママと娘のようで(笑)。美帆は母親に対して甘えたりはしないけれど、お母さんは言わずとも分かってくれている。あの距離感は私の実際の家族とも少し似ていて。親の前だと格好つけちゃって素直になれなかったりするんですが、「なんかあったのね」とただ一緒にいてくれる、そんな空気感がありました。
ーーその一方で日穏さんは、分かりやすい死神のスイッチやポーズだけでなく、何となく自然なところで「この人は人間じゃないんだな」と分かる動きが随所にありました。“人間じゃない”人物として、一番重視していたことは何ですか?
日穏:人間に対して疑問に思っていることですね。人間社会のすべてが疑問だから、スッと「なんでなんだろう?」という顔をしている気がするんです。だから、ずっと「なんでなんだろう」と思いながらお芝居をしていました。
桜井:日穏くんはお芝居をしているときとオフのときとで、あまり差がないんですよ。役を演じているときも自然体だし、カメラが回っていないときもそのままで。それが圧迫感になるわけでもなく、これだけ影のある役が似合うのに切り替えが鮮やかというか。不思議と「ただそこに存在している」というお芝居の説得力がありましたね。
日穏:うれしいです。ありがとうございます!
ーー今回、お2人とも美容師として髪を切ったり洗ったりするシーンがありましたが、実際にやってみて分かったことや感じたことはありますか?
桜井:実際には切っていないんです。役者さんの地毛を切らないようにダミーのウィッグをつけて「ここ切ってるよ」と見せていたんですが、ウィッグがあまりにも自然すぎて「本当に髪を切ってしまったらどうしよう」となっていました。
日穏:わかります。
桜井:すごく怯えながら、「人の髪を扱うのってこんなに怖いんだ」と思ってやっていました。改めて髪を洗う行為も、相手の心に少し入っていくような不思議な動きですよね。髪の毛って気が宿るとも言いますし。
日穏:カットのシーンは心配でしたが、「もうやっちゃえ!」と思い切ってやりました。でも、サクマが美帆にシャンプーするシーンが難しくて。事前にレクチャーしていただいたときは「その通りに泡立てて流して」と褒めていただけたんです。でも、終盤の大切なシーンでいろんな感情を込める必要もあったので、ガシガシ力強く洗うわけにはいかないじゃないですか。ゆっくり洗って、ゆっくりシャンプーを落とすから、全然泡立たなくて(笑)。あれは心の中で「どうしよう!」とマジで焦りながらやっていました。
桜井:でも、その迷いがサクマの心とリンクして、逆によかったかもしれないね。
ーー本作は「記憶」と「思い」も大きなテーマになっています。忘れてしまったとしても、思ったことは残り続ける。そんな思いの強さについてなにか感じたところはありましたか?
桜井:サクマと美帆の関係は、観る人によって捉え方が違うと思うんです。恋愛なのか、友達なのか、仲間なのか、カテゴライズできないような関係です。でも、確実に2人の間には通じ合った思いがあるんです。少し映画とは関係ない話になりますが、最近祖母が亡くなりました。長いこと認知症を患っていて、亡くなる前に会いに行ったときはもうほぼ目しか開いていない状態で、誰が来たのかも分からないはずでした。でも、私が手を取ったときに、祖母がハッとしたんです。分かるはずないのに、目で私を認識してくれたんですよね。だから、記憶はもうないかもしれないけれど、祖母の中に忘れない思いがあったんだろうなと思ったら嬉しくなりました。本作ともすごく重なるなと感じました。
日穏:鳥肌たちました。すごい話。
桜井:本作はエンタメであり、フィクションではありますが、実際にそういう「思い」は存在すると信じています。誰かの人生に私たちが作ってきた映画が……すべては覚えていられなくても、「忘れられない思い」として何かを呼び起こすものが残るなら、エンタメとして素晴らしいことですよね。「この映画のあのシーンを思い出しちゃう」とか、エンタメは人の心に深く記憶させる力があると思うので、そんなものを一つでも残せたらいいなと思います。
日穏:桜井さんの話が素晴らしすぎて自分からは何も言えないです(笑)。
ーー日穏さんはお芝居のお仕事も重なっていく中で、このタイミングで本作に出演できた良さはありましたか?
日穏:本作の撮影期間中はちょうどオーディション中(THE LAST PIECE)だったこともあり、気持ちの切り替えが大変だなと思いながらやっていました。でも今振り返ると、めちゃくちゃいい経験をさせていただいたなと。アーティストとしてデビューするという自分の夢を追いかけることと、死神サクマとして人間を見つめていくことがどこかリンクするような瞬間もあって。すべてが今に繋がっていると感じます。本当にやってよかったですし、映画自体が素晴らしい作品なので、参加できて心から良かったです。
桜井:オーディション中に撮影もしていたのは本当にすごいことです。撮影中は黒髪だったから、今日久しぶりにお会いしたら金髪になってオーラがあって。今はもうデビューされてさらに輝きが増していて……眩しくて遠い存在です(笑)。
日穏:そんなこと言わないでくださいよ(笑)。
■公開情報
『死神バーバー』
新宿武蔵野館ほかにて公開中
出演:桜井日奈子、日穏、岡部大、平井亜門、猪塚健太、佐久間祥朗、河屋秀俊、武田暁、山脇辰哉、細井じゅん、坂巻有紗、日高七海、光嶌なづな、荒井啓志、佐々木ほのか、山下敦弘、川上さわ、守屋文雄、森蔭晨之介、西山真来、工藤遥、宇野祥平、美保純
監督:いまおかしんじ
原案:梅木陽一
脚本:谷口恒平
主題歌:Furui Riho「太陽になれたら」(LOA MUSIC / PONY CANYON)
音楽:大槻美奈
撮影:達富航平
照明:及川凱世
録音・整音:三門優介
企画・キャスティング:直井卓俊
製作:『死神バーバー』製作委員会
制作プロダクション:レオーネ
製作幹事:SPOTTED PRODUCTIONS、ポニーキャニオン
配給:SPOTTED PRODUCTIONS
©『死神バーバー』製作委員会
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