『ラブ≠コメディ』はただの“王道アイドル映画”ではない! 仕事に悩む人へ贈る一作に

 華やかなキャリアを手にしていても、心のどこかで「このままでいいのだろうか」と足元を見つめ、立ち止まってしまう瞬間がある。そんな戸惑いや焦燥感を抱えている方に、ぜひおすすめしたい映画がある。中島健人主演の『ラブ≠コメディ』だ。

 本作は、360度全方位イケメンとしてラブコメ作品に引っ張りだこな人気俳優・神崎(中島健人)と、アイドルとして活躍する南風美里(長濱ねる)が、劇中の「ラブコメディ」で共演しながら心を通わせていく青春物語。公式サイトの「観終わったあと、誰もが笑顔で『明日も頑張ろう』と思える、最高の輝きに満ちた大人の青春物語!」というコピーを読めば、「美男美女が演じる、王道の胸キュン映画だろう」と想像するかもしれない。

 たしかに、劇中にちりばめられた「胸キュン要素」は期待通り、いやそれ以上だ。しかし、本作の真の醍醐味は、決して恋愛のきらめきだけにとどまらない。むしろ、現場で懸命に働く人々が抱える葛藤や矜持、そして「仕事に向き合うスタンス」が真っ向からぶつかり合う、実に熱量の高い「お仕事映画」に仕上がっている。

 神崎は、冒頭からマントを翻し、完璧なキメ顔を披露して見せる。だが、瞳の奥にはどこか微かな翳りがあり、覇気がない。私たちがよく知る、あの眩しい「ケンティースマイル」とは違う……。スクリーンに神崎が映し出された瞬間、そんな微かな違和感が胸をよぎる。そしてその「違和感の正体」は、物語が進むにつれて少しずつ紐解かれていく。

 表向きは「ラブコメ特化型のアイドル俳優」として割り切っているように見える神崎だが、その胸中には「役者として正当に評価されたい」という切実な葛藤が渦巻いていた。着実にステップアップしていく仲間を羨みながらも、周囲からは「顔がよすぎるから賞は取れない」と軽くあしらわれる日々が続く。

 そんな評価に苛立ちながらも、ひとたびラジオの前に立てば「サタデーナイトジャッパーン!」とテンション高く叫び、リスナーへ投げキッスを贈るなど、アイドルとしてのサービス精神を発揮してしまう。求められる役割と、本当になりたい自分。その狭間で揺れる神崎の姿はあまりにもリアルで、まるで演じる中島自身の「ドキュメンタリー」を覗き見しているような錯覚を覚えたほどだ。

 劇中には、南風との共演で心拍数が上がりすぎて、鼓動をマイクに拾われてしまうシーンや、上半身裸で「どうした俺?」と戸惑いながら全速力で走る姿、ペットボトルの水を勢いよく吹き出す瞬間など、これまでのスマートなイメージを覆すような、思い切ったコミカルな描写が散りばめられている。時折、神崎が戸惑いを帯びた瞳を見せた瞬間、「完全究極のアイドル」から「役者としてどう生きるか」を模索する神崎の生々しい揺らぎが滲んでいた。

 そんな神崎と、長濱ねる演じる南風は、当初お互いの仕事へのスタンスの違いから激しく衝突する。しかし、反発し合う根底にあるのは「片手間でやっていると思われたくない」「真剣に取り組んでいる姿勢を伝えたい」という、表現者としての思いからくるものだった。

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