『トイ・ストーリー』の続編展開は異例だった? クリエイターたちの知られざる情熱と奮闘
7月4日の『トイ・ストーリー5』公開に向けた、『金曜ロードショー』(日本テレビ系)での『トイ・ストーリー』シリーズ連続放送。第2夜となる6月19日に放送の『トイ・ストーリー2』(1999年)は、フル3DCGアニメの今につながる隆盛を決定づけた作品であり、アニメ映画の続編をディズニーやピクサーのラインアップに乗せた作品として見逃せない。
『トイ・ストーリー2』は、タイトルの数字が意味しているように、ピクサー・アニメーション・スタジオが手がけた世界初のフル3DCGアニメ映画『トイ・ストーリー』(1995年)の続編だ。実は、このアニメ映画での続編製作が、ディズニー&ピクサーでは異例のことだった。
『トイ・ストーリー2』の想定を超えたクオリティ
今でこそピクサーでは、『トイ・ストーリー』だけでなく『カーズ2』(2011年)、『モンスターズ・ユニバーシティ』(2013年)、『インサイド・ヘッド2』(2024年)といった続編が作られ、アニメ映画のラインアップの大きな柱になっている。親会社のディズニーでも、『アナと雪の女王2』(2019年)、『ズートピア2』(2025年)とアニメ映画の続編が並ぶが、こうなる前は続編を映画として公開することを避けてきた。
『アラジン』(1992年)の続編に『アラジン ジャファーの逆襲』(1994年)というアニメーション作品があるが、これはビデオパッケージ向けに作られたものだった。『アラジン』のビデオが世界で2400万本、日本でも200万本以上売れたように(※)、この頃はホームビデオ市場が全盛で、アニメーション作品も映画の人気をバックに同じキャラクターや世界観を持ったビデオを出せば、飛ぶように売れていた。
作るほうとしても、映画ほどコストをかけないで大ヒットを見込めるビデオの市場を重要視していた。『トイ・ストーリー』の続編もこうした流れに沿ってビデオ向けに制作がスタートした。ジャーナリストのデイヴィッド・A・プライスによる『メイキング・オブ・ピクサー 創造力をつくった人々』(櫻井祐子訳、早川書房)に引用されている1997年3月12日付けのプレスリリースでも、「ウォルト・ディズニー・スタジオとピクサー・アニメーション・スタジオは、アカデミー賞にノミネートされた先駆的な映画『トイ・ストーリー』の続編を、ホームビデオとして制作中であることと、本日発表いたします」と書かれていた。
この方針を覆したのが、『トイ・ストーリー2』の想定を超えたクオリティだった。『メイキング・オブ・ピクサー』には、「11月にディズニー経営陣のジョー・ロスとピーター・シュナイダーが、完成したアニメーションを一部含む映画のストーリー・リールを、ピクサーの映写室で見た。作品の高い品質に感銘を受けた二人は、『トイ・ストーリー2』を劇場公開してはどうだろうかと考えるようになった」と書かれている。ピクサーを挙げて良いものにしようとしていたことが、続編はビデオというディズニーの流儀をひっくり返した。
実際、完成して公開された『トイ・ストーリー2』はアニメ映画がターゲットとしていた子供たちだけでなく、大人も感動する作品となって前作を上回る大ヒット作を記録した。カウボーイ人形のウッディが実は大変な価値を持つコレクターズアイテムだったと判明。その価値を知るアルという玩具量販店の経営者によって盗み出され、ウッディが登場していた人形劇の他のキャラクターたち、カウガール人形のジェシーに金鉱堀りのプロスペクター、ウッディとジェシーの愛馬ブルズアイの人形とセットで、日本のコレクターに引き渡されそうになってしまう。
ここで繰り出されるのが、古くなったからといって持ち主から見向きもされなくなったり、捨てられてしまったりする可能性の高い玩具が、それでも持ち主の元に居続けることと、コレクターズアイテムとして保管され大切にされることのどちらが玩具にとって幸せなのかといったテーマだ。
『トイ・ストーリー2』は、玩具で遊んでいる子供たちに、そうした玩具たちの気持ちを考えるきっかけを与える。玩具と遊ばなくなった大人たちは、過去を振り返って物との向き合い方を改めて自分自身に問いかける。人生において自分が一番輝ける場所はどこなのか、自分を必要としてくれる人といっしょにいることが、何よりも大切なことではないのかと考える人もいただろう。
玩具たちが生きている人間のように動き回って大暴れするという、子供が喜びそうな内容のアニメーションかと思いきや、いつか持ち主の手を離れ壊れて朽ちていく運命にある玩具を通して、諸行無常の思想に通じるテーマを繰り出してきた。シリーズが5作目まで作られ続けているのも、こうした普遍的な人生観と重なるドラマがあったから。そうなる道が『トイ・ストーリー2』で決定づけられた。