Netflixで『イカゲーム』以来の快挙となるか? 『鉄槌教師』が世界中で支持される理由

 そんなドラマとしての魅力をたっぷり備えた本作だが、実は原作であるウェブトゥーンは、海外配信されるも、未成年に対する過度な暴力描写や女性嫌悪の表現が批判を浴び、連載が中止された国もあった。ドラマの公開後、ダークヒーロー的なアプローチが映画『犯罪都市』シリーズに似ているともいわれたが、『鉄槌教師』の舞台は未成年が通う学校である。同列に扱うことはできない。

 そのため、ドラマ化には懸念の声も多くあったが、不安のある部分をうまく調整し、テーマをより浮き彫りにさせたことが、ヒットを呼び寄せたようだ。「教権の確立」というと、学生との対立ばかりが取り沙汰されそうだが、ドラマでは教育の価値と被害者を守ることを中心に置き、大人や社会の問題についても取り上げた。

 このドラマで扱われた、権力者の子どもによる特権の乱用、モンスターペアレントによる横暴、学生間のオンライン賭博や麻薬などの犯罪行為、SNSを悪用した陰湿なスクールカーストなどは、韓国だけでなく、日本はもとより世界中の教育現場で起きていることだという。つまり、全世界共通の問題なのである。本作は、主人公ナ・ファジンが悪い奴らをスカッと成敗する、いわゆるサイダードラマや私的制裁ものに留まらず、国を巻き込んで構造的な部分に踏み込み、こうした問題の解決方法まで提示していくのだ。

 学校は社会の縮図でもあり、社会でも同様の問題がはびこっている。学校関係者でなくとも、ドラマの内容に切実な想いを抱いた人が多かったのではないか。

 危惧されていた暴力の描写については、破天荒なアクションに落とし込んだことで、生々しさを感じない演出になっていたように思うが、個人的にひとつ思うのは最初と最後を締めくくるナ・ファジンの手を大きく振り上げる平手打ちのことである。これは、韓国の家庭で夫や父親が女性に対してよく使ってきた暴力形態でもあり、韓国ドラマでも何度も描かれてきた。本作の主人公が男性ではなく女性であったら、さらに社会風刺的な痛快さがあったのではないかと想像する。

 このドラマの真のラストシーンともいえる、ナ・ファジンの妻の墓参りをする場面。妻は、学生を最後まで信じた教師だった。お墓は、街を見下ろす高台にあり、そこには亡き恩師を慕う学生たちの声があふれている。これが理想とする教師と学生の関係、人間関係なのだろう。ドラマとしての面白さと社会的メッセージを兼ね備えた韓国ドラマの傑作が、またひとつ誕生した。

■配信情報
『鉄槌教師』
Netflixにて独占配信中
出演:キム・ムヨル、イ・ソンミン、チン・ギジュ、P.O

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