独学1年半でキー局からのオファーが殺到 AIディレクター・宮城明弘が明かす現場の最前線

独学わずか1年半。プロの現場でAIを操るためのノウハウ

『月夜行路 ―答えは名作の中に―』©日本テレビ

宮城:実は、独学で勉強し始めてからまだ1年半くらいなんです。もともと私の周りに売れていない役者や映画監督がたくさんいて。彼らが作品を作ろうとしてもなかなか予算が集まらない現状を見て、「映像制作のプラスアルファとして、AIで何かできないかな」と思い、個人的に勉強を始めたのがきっかけでした。それが今や、自分でもここまでいろんな話がくるとは思っていませんでした(笑)。

ーーたった1年半で地上波ドラマを任されるまでになるとは驚きました。SNSなどでの個人制作とは違い、プロのドラマ制作の現場においては、映像表現そのものの知識が必要不可欠な世界だと感じます。

宮城:私は独立するまで、15年ほど映像畑でCMやショートドラマのプロデューサーをしてきました。その経験があるからこそ「ここはこういうアングルにしたほうがいい」といったカメラワークや映像の流れ、リハーサルでの演出の意図を汲み取ることができます。SNSなどで「AIで何でも作れます」と発信している人は多いですが、プロンプトだけで映像を思い通りに動かすのは想像以上に大変です。映像作りの基礎がない方が実際の現場に来ても、なかなか通用しないと思います。

ーーテレビ局ならではの厳しいルールや縛りもあるのでしょうか?

宮城:縛りは非常に多いです。生成AIによってはネット上のデータを学習してしまう懸念があるため、基本的にはテレビ局やプラットフォーム側から使用可能なツールが厳格に定められています。情報漏洩や著作権の観点から、海外の不透明なツールなどは一切使いません。「AIが勝手に想定して作ってくれる便利な機能」は、プロの現場ではほぼ使えないのが現状です。

ーー使用するツールだけでなく、AIへの指示の出し方についても決まりがあるのですか?

宮城:プロンプトを打ち込む際にも、テレビ局ごとに厳しいルールがあり、カットごとのプロンプトはすべて保管して、「固有名詞やタレント名、『〇〇風』といった言葉は一切入れていません」といつでも提出できるようにしています。

AIは人の仕事を奪うのか?

ーー現在、キー局からのオファーが殺到しているそうですね。

宮城:殺到しています(笑)。昨年の秋頃からいろんな局で「AIでどんな映像が作れるのか」というお問い合わせをいただくようになりまして、実は今、同時進行で10本ほど作品を抱えている状態です。

ーー10本同時進行ですか(笑)。宮城さんお一人で回されているのですか?

宮城:基本的には私一人で対応していたのですが、さすがに手が足りなくなってきたため、今はアシスタントを一人入れて現場を分担し始めています。もともと動画編集の知識がある子だったので、現場で直接育てながら一緒に回しているような状況ですね。

『サバ缶、宇宙へ行く』©︎フジテレビ

ーー業界内外で「AIに仕事が奪われる」という懸念も聞かれますが、宮城さんはどうお考えですか?

宮城:倫理的な部分は私自身が一番気にしているところです。私は俳優さんやクリエイターさんの仕事を奪うのではなく、「俳優をさらに良い演出で見せるための一つの手段」としてAIを使いたいと考えています。例えば以前担当した全編AIドラマ『サヨナラ港区』(読売テレビ)でも、声優さんや音響さんの仕事は奪わず、「アニメと実写の中間のような新しいコンテンツ」を作るためにやりました。実写ドラマにおいて、生身の俳優が持つ独特な「間」や、繊細な感情の機微を伴う表情の変化といった、人間ならではの表現をAIで代替しようとは思っていません。

ーーAIをあくまで表現を拡張するためのツールとして捉えているのですね。最後に、今後の展望をお聞かせください。

宮城:現在、さまざまな場所で著作権などの倫理に問題があるAI作品が溢れてしまっていますが、クリエイターと名乗るならそこは絶対に守るべきです。それをやってしまうと、業界全体の信頼を損ない、結果的に自分たちの仕事の首を絞めることになってしまいますから。便利な技術だからこそ、使い方を間違えれば現場そのものを崩壊させかねません。映像業界でもAIを使いこなせる人は今後増えてくると思いますが、限界を探りながら、人間のクリエイターとAIのベストな妥協点・共存点を見つけていくことが、今の私の役目なのかなと思っています。

■放送情報
『サバ缶、宇宙へ行く』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:北村匠海、出口夏希、黒崎煌代、八嶋智人、三宅弘城、村川絵梨、佐戸井けん太、熊切あさ美、吉本実由、ソニン、迫田孝也、鈴木浩介、荒川良々、神木隆之介、井上芳雄(語り)ほか
原案:『さばの缶づめ、宇宙へいく』(小坂康之、林公代/イースト・プレス)
脚本:徳永友一
音楽:眞鍋昭大
主題歌:Vaundy『イデアが溢れて眠れない』(SDR/Sony Music Entertainment)
演出:鈴木雅之、西岡和宏、髙橋洋人
プロデュース:石井浩二
プロデューサー:野田悠介、中沢晋
制作協力:オフィスクレッシェンド
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/sabauchu
公式X(旧Twitter):https://x.com/sabauchu_fujitv
公式Instagram:https://www.instagram.com/sabauchu_fujitv/
公式TikTok:https://www.tiktok.com/@sabauchu_fujitv

◼️配信情報
水曜ドラマ『月夜行路 ―答えは名作の中に―』
TVerにて、第1話~第3話・最新話無料配信中
Huluにて、全話&オリジナルストーリー配信中
出演:波瑠、麻生久美子、作間龍斗、久本雅美、栁俊太郎、渋川清彦ほか
原作:秋吉理香子『月夜行路』(講談社文庫)、『月夜行路 Returns』(講談社)
脚本:清水友佳子
音楽:Face2fAKE
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:水嶋陽、小田玲奈、松山雅則
トランスジェンダー表現監修:西原さつき、若林佑真、白川大介
演出:丸谷俊平、明石広人
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/getsuyakouro/
公式X(旧Twitter):https://x.com/getsuyakouro

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