『素晴らしき新世界』『地獄に堕ちるわよ』に共通点? “悪女”がNetflixで人気の理由
Netflixの今期の韓国ドラマで今最も勢いづいているのは、なんといっても『素晴らしき新世界』だということは、日本でも韓国でもドラマファンは全員一致の意見だろう。
朝鮮時代に希代の悪女と称され、毒を賜り処刑された姜禧嬪。彼女が現代へよみがえり、さらに無名女優シン・ソリの体へ入り込んだことから始まる本作には、姜禧嬪/シン・ソリとひょんな出会いをする“資本主義の怪物”こと冷酷な財閥御曹司チャ・セゲ(ホ・ナムジュン)とのラブコメディあり、姜禧嬪を陥れた陰謀の正体を探るサスペンスあり、タイムリープをめぐるファンタジーありと、ヒットする韓国ドラマの王道的セオリーが詰めこまれている。
とりわけ姜禧嬪という“悪女”が主人公であることは、本作を強く特徴づけるファクターだ。もちろん、『ザ・グローリー 輝かしき復讐』で稀代のヴィラン、ヨンジンを文字通り憎らしいほどに快演してみせ、視聴者から忌み嫌われるどころかその迫真の演技力でスターダムへ上り詰めたイム・ジヨンが姜禧嬪/シン・ソリを演じていることの功績は大きい。そして今回の姜禧嬪は、凶悪な校内暴力の首謀者だったヨンジンよりも幾重ものレイヤーを持つのだ。
現世に転生してきた姜禧嬪は、迷い込んだ歴史博物館で自ら描いたはずの書画も他人の作となっていて、誰かの策略で歴史が糊塗されていることを知る。展示品の前に集まる子供たちが無邪気に自分のことを悪者だと言う姿に、処刑の瞬間こそ激しく抵抗したものの、その位の高さにもかかわらず穏やかな性格だったはずの姜禧嬪はショックを受ける。しかし、家庭環境に恵まれず不遇で弱々しかったシン・ソリとして生き返った2度目の人生を「褒美でも罰でもいい。生き延びた」と受け入れる。そしてかつて教えられた「三従四徳」——父に従い夫に従い、息子に従って生きることを女性の美徳とし、頼るところなく生きるよりも死ぬほうがいいという教えに対し、「そんなわけがない。犬の糞にまみれてもこの世のほうがマシだ。ゆえにがむしゃらに生きてやる。それがこの体の主への礼儀でもある」と肝を据えて現世を生き抜くことを決意する。「幼くしては父に従い、結婚しては夫に従い、夫が死ぬと息子に従う」という、女性を服従させる儒教道徳をはねつけ、しぶとく立ち回りながら不条理を喝破していく姜禧嬪は、まるでその“悪女”というレッテルを利用しているかのようだ。
シン・ソリとなった彼女は、冷酷な御曹司であるチャ・セゲを振り回すが、そのやり方もいわゆる典型的な女性の魅力を武器にするような振る舞いではない。たとえば「あなたに抱きしめられてもドキドキしない。犬のほうがいい」などとはっきりとした主張でやり込めるといったふうにである。実のところはソリも本心を隠すための突き放しであり、結果的にこの“翻弄”がセゲの恋心に火をつけることになるわけだが、こうした芯の通った“悪女”が主人公であるおかげで、王道的性格を持つにもかかわらず刷新されたラブコメディとして歓迎されたのではないか。