『風、薫る』養成所一期生のこれまでの成長 患者たちから学んだ“命”と“看護”の尊さ
婦人科で実習を行う喜代(菊池亜希子)と多江(生田絵梨花)は、慣れない赤子の世話に四苦八苦していた。養成所のときから一期生の最年長として、懐深く同級生たちを見守っていた喜代。あまりその内実を話そうとはしていなかったが、看病婦のツヤ(東野絢香)が待合室で赤子の世話をするのは仕事が増えるから辞めてほしいと話したとき、喜代は嫁いだ先の家で子どもができなくて離縁された過去を打ち明ける。「初めは赤ん坊を見るのもつらかった」と話し、おっかなびっくりで赤子を抱いていたが、自然な笑顔で子どもをあやしている姿を観て、彼女がすでに前を向いていることが伝わってきた。
医師の娘としての自負をもって養成所に入学した多江も、随分と考え方が変化したキャラクターだ。最初は看護婦を志す理由の違いから、同級生たちとも一線を引いていた。しかし、ともに未知の看護を学ぶなかで、彼女自身も看護婦という職業に対しての偏見の目を変えていく。一時は父親が用意した縁談のために養成所を辞めようとしていたものの、医師とは異なる立派な看護婦を目指すことを決めた。最初は「シーツを替えてもケガも病も治らない」と言っていた多江が、実習がスタートしてからは換気のされていない病室の様子に苦言を呈していた姿も印象的。りんや直美からも理屈っぽいところを指摘されても怒らず、柔らかい表情で冗談を言うようになった姿を見ても、同級生たちと打ち解けているのがわかる。
呉服屋の娘で看護婦の服装に憧れを抱いていたしのぶ(木越明)は、ようやくナースの洋服を着て働くことができて実に嬉しそうだ。眼科に配属された彼女はほかの養成所メンバーとは違って1人で行動することが多く、あまりしのぶの働きぶりが描かれることは少ないが、意地悪してくるヨシ(明星真由美)とも対等に張り合えているところに、彼女の意思の強さを感じる。
これから困難が待ち受けていることが予想されるのが、ナイチンゲール女史からの思し召しを受け、女学校を辞めて養成所に入学したゆき(中井友望)と、青森からやってきた農家の娘・トメ(原嶋凛)。2人は内科で小野田(宮地雅子)の世話をしているが、彼女の容体はあまり芳しくない。特にゆきは自身を娘のように話してくれる小野田に強い思い入れを抱いているようだった。ただ、患者の鼻血を見て倒れてしまうほどの彼女にとって、小野田との別れを受け入れることができるとは今のところ思えない。ナイチンゲールのような看護婦を目指して、理想を追い求めてきた彼女が現実を見たときに、自身の感情をコントロールすることができるのか。一方のトメは、養成所のメンバーの中では最年少ながら、周りのことがよく見えており、平常心で仕事に取り組んでいる。ゆきのメンタル面のサポートをする姿も頼もしい。
ゆきだけでなく、ほかの養成所メンバーにとっても、患者との別れがつらいのは同様だろう。しかし、看護婦として患者のそばに立つ限りは、耐えがたい別れも経験しなければならない。これから幾多の悲しみや苦しみが待ち受けているなか、果たして養成所メンバーは風が吹きすさぶ道のりを、勁草のように決して倒れることなく進み続けることができるだろうか。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK