山下智久が大切にする“正直であること”の美学 「自分の人生は自分で作っていくもの」

 2022年にNHK総合のドラマ10枠で放送が開始されたドラマ『正直不動産』は、不動産業界の裏側を赤裸々に描きつつ、山下智久演じる永瀬財地の「嘘がつけなくなる」という特異なキャラクターが幅広い層から支持を集めてきた。ドラマシリーズ、そしてスペシャルを経て、5月15日より初の劇場版が公開されている。4年にわたって主人公・永瀬を演じ続けてきた山下。「ご褒美」と語る映画化への思いや、国内外で活躍し続ける彼が今、改めて大切にしている“正直であること”の美学について迫った。

「永瀬という役で、おじさまたちに認めてもらえた気がした」

ーードラマシリーズ、スペシャルを経ての映画化ですが、山下さんご自身はこの映画化という展開をどのように受け止めましたか?

山下智久(以下、山下):純粋に嬉しかったです。スタッフさんとキャストのみんなで一生懸命走り続けてきた甲斐があったなと。僕の中では“ご褒美”だと思って、楽しく撮影させていただきました。

ーードラマシリーズとはフォーマットが変わるわけですが、映画だからこそ求められるものや、アプローチで意識したことはありますか?

山下:ドラマだとどうしても時間の制約があって表現しきれなかった部分があるんです。でも映画では、1人1人のキャラクターの心情により深くフォーカスできた。これは映画ならではの贅沢な時間の使い方だったんじゃないかなと思います。

ーー実際に拝見して、これまでのシリーズらしさを保ちつつ、ストーリーに一本芯が通っていて、非常に優しい物語だと感じました。永瀬を演じる上で、変化させた部分はあったのでしょうか。

山下:向き合う相手によって少しずつ変わる部分はありましたが、基本的には「永瀬財地というキャラクターをぶらさない」ことが一番大事だと考えていました。周りの状況が変わっても、彼だけは変わらない。リアクションに関しても、映画ということで少し大げさにスケールアップしているところもありますが、それも『正直不動産』らしくていいなと感じています。

ーードラマシリーズのときはアドリブが多かったと伺っていますが、今回の映画版ではいかがでしたか?

山下:ちょこちょこありましたね(笑)。自由にやらせてもらいました。監督も、後で編集するときに素材がいっぱいあったほうがいいだろうと思ってくださっていたみたいで。自由に遊ばせてくれるスタッフさんの懐の深さがあってこそですね。

ーー特に印象に残っているアドリブシーンはありますか?

山下:本当にその場で思いついたことをやっていたので……逆に覚えていないんです(笑)。おそらく、本編では使われていないシーンもたくさんあると思います。本当に楽しくて笑ってしまったNGシーンなんかもたくさんあるので、自分でもメイキングを観たいくらいです。

ーーキャスト同士の仲の良さが画面からも伝わってきますが、シリーズを重ねる中で“再会”することへの特別な思いもあったのではないでしょうか。

山下:また集まれるというのは、本当にすごいことだと思います。いいキャストに恵まれましたね。撮影が終わっても「また会いたい」と思える皆さんです。セットにいると、たまに自分が俳優なのか不動産屋なのか分からなくなる瞬間がありました(笑)。毎日そこへ通って働いているような気持ちになれたのは、キャストの皆さんとの相性がピタッとはまったからだと思います。

ーー『正直不動産』は、2022年から続く山下さんの“新たな代表作”になった印象があります。ご自身にとって、この作品はどんな存在ですか?

山下:今まで僕のことを認知していなかったような世代の方々にも届いたというのはすごく大きかったです。それに、不動産って誰もが一度はお世話になる親近感のあるテーマですよね。僕自身も、この作品を通じて「正直であること」「素直であること」、そして「人と人との心にフォーカスすること」の大切さを学べたような気がします。

ーー今の時代、嘘をつかずに生きる永瀬のような存在は、観ていてどこか勇気をもらえます。

山下:正直に言うことで摩擦が起きることもあるかもしれないけれど、長い目で見たときに「素直に生きてよかった」と思えるはず。自分はこういう人間なんだと受け入れて表現する勇気は、今の時代に必要ですよね。

ーー『正直不動産』がここまで愛される作品になった理由を山下さんご自身はどう分析されていますか?

山下:何が本当か分からない時代だからこそ、多くの方々が永瀬のような「不便なほどの正直さ」を求めていたんじゃないでしょうか。今は「これはパワハラかな」とかいろいろ考えて、何も言えない息苦しい世の中ですよね。そんな中で、永瀬が言いたいことをズバッと言う。でもどこか憎めない。そんな姿にスカッとしてもらえたのかなと思います。最近、サウナでおじさんに「『正直不動産』面白いね」って話しかけられたこともあって(笑)。

ーーそうなんですね(笑)。それは永瀬というキャラクターが親しみやすい存在だからこそですね。

山下:そうだと思います。以前演じた『コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』(フジテレビ系)のようなクールで喋らない役のときは、話しかけられなかったですから(笑)。永瀬という役で、おじさまたちに認めてもらえた気がして、すごく嬉しかったです。

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