『銀河の一票』は“穴に落ちた”人に手を差しのべる 名軍師を得ていよいよ選挙戦へ
「失敗じゃない。穴に落ちちゃっただけ。(中略)下向かないで歩いてきたんだよね」
『銀河の一票』(カンテレ・フジテレビ系)第4話では、当世風の三顧の礼が描かれた。
出馬を決意したあかり(野呂佳代)と茉莉(黒木華)たちは、来たる都知事選に向けて準備に着手。地盤のないあかりにも、人、カネ、事務所は不可欠だ。さらに政策の勉強と並行して、陣営の要になるブレーンをスカウトする。
短期決戦の選挙では、選挙戦略が結果を大きく左右する。その鍵を握るのが選挙参謀だ。2024年7月の都知事選で、次点で敗れた新人候補の大躍進の陰に「選挙の神様」と呼ばれた選挙参謀の存在があったことは記憶に新しい。
茉莉たちが向かったのはさびれたコインランドリー。と言っても外見だけで、中は人でにぎわっている。五十嵐隼人(岩谷健司)は茉莉の父・鷹臣(坂東彌十郎)の元秘書で、現在は町の人を相手に相談所を開いている。選挙で負け知らずの五十嵐には“テンサウザンド”の異名があった。
しかし、五十嵐は茉莉の頼みを断る。五十嵐に政治の世界へ戻る気はないようだった。その五十嵐が選挙参謀を引き受けるまでの顛末が第4話では描かれた。
序盤の3話を終え、『銀河の一票』はいよいよ選挙戦へ動き出した。最初は話だけ聞くつもりだった五十嵐があかりと会って、スナックのママの人柄に触れ、北斗(阿久津仁愛)に接する姿を見て、あかりに魅了されるまでの過程が実感をもって迫ってきた。
第4話を観て、筆者は『三国志』を想起した。劉備が諸葛亮を軍師に迎える際のエピソードが「三顧の礼」である。茉莉とあかりは五十嵐に礼を尽くし、軍師として迎えようとする。紆余曲折を経て、五十嵐は自らの意志で参謀となり、軍資金の“レンガ”を積む決心をする。
対比的に描かれているのが日山(松下洸平)だ。日山は都知事選で民政党の都連から出馬を要請されるが、あえて固辞する。理由は鷹臣への恩義で、それを聞いた都連会長の葛巻(堀部圭亮)は鷹臣の元へ向かう。鷹臣は、党内と友党の協力を取りまとめて出直すように命じた。
注文をつけてお膳立てをさせることで、外堀を固めて地ならしをするやり方は、ある意味ではこれも三顧の礼なのかもしれない。この場合は礼をさせていることになる。その根底にあるのは権謀術数を駆使した力の政治で、裏では秘書の雫石(山口馬木也)が暗躍していた。
五十嵐は、政界の駆け引きと金と力にものを言わせるやり方に辟易していたのではないだろうか。そんな五十嵐の心を打ったのがあかりの飾らない人柄で、北斗を励ます姿を見て、茉莉があかりを推す理由がわかったのだろう。それは、五十嵐が見てきた政治とは対極のふるまいだった。
今作は政治・行政の豆知識がちりばめられている。第4話で筆者が大事だと思ったのは「プッシュ型/プル型」の違いである。プッシュ型は、行政の側からサービスを提供するアプローチで、プル型は、市民の方から手続きをしないとサービスが受けられない。情報格差によって本来受けられる支援が受けられないなら、そこには見えない落とし穴があると言える。
選挙は残酷である。落選すれば供託金を没収されたり、その日から無職になったりする。トカゲのしっぽ切りに遭い、“穴に落ちた”五十嵐にも、冒頭で引用したあかりの言葉は響いたはずだ。
策とか数字とか、選挙のことを言い出したらいろいろあるのはたしかだろう。でも結局最後は人間で決まるのではないだろうか。『銀河の一票』は徹頭徹尾、人の心を動かすドラマであり、今作はこれで行くのだという覚悟が感じられる第4話だった。
■放送情報
『銀河の一票』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00~放送
出演:黒木華、野呂佳代、三浦透子、渡邊圭祐、倉悠貴、小雪、本上まなみ、シシド・カフカ、岩谷健司、山口馬木也、木野花、岩松了、坂東彌十郎、松下洸平ほか
脚本:蛭田直美
演出:松本佳奈、藤澤浩和、瀧悠輔、稲留武
プロデュース:佐野亜裕美(カンテレ)
制作プロデュース:植木さくら、森田美桜
音楽:坂東祐大
主題歌:浜野謙太(在日ファンク)&後藤真希 feat. 黒木華&野呂佳代「おーへい」(日本コロムビア)
制作協力:AOI Pro.
制作著作:カンテレ、MYRIAGON STUDIO
©︎カンテレ
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