見上愛×上坂樹里が共鳴するバディへ 『風、薫る』第1話の“双六伏線”を回収し序章が完結 

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第5週「集いし者たち」より、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)が梅岡看護養成所に入学し、いよいよ女学校編が幕を開ける。つまりは、第4週「私たちのソサイエティ」第20話までは2人が看護の道、トレインドナースを志すまでの序章だったと言えるだろう。

 その大きなきっかけとなったのはアメリカで看護を学び、2人をトレインドナースにならないかと誘った捨松(多部未華子)にほかならないが、第20話に登場した虎太郎(小林虎之介)や卯三郎(坂東彌十郎)、美津(水野美紀)、そして“風”となった信右衛門(北村一輝)といったたくさんの人たちの言葉や支えがあり、りんは女学校へと歩みを進めることが分かる。

 恋心を秘めながらも「だいじだ。りんならできる」と後押しした虎太郎に、「医療は今にビッグマーケットになりますよ。10年後、100年後には誰もがナースの看護を受ける。そういう社会が来ているかも」と冗談混じりに未来を説いた卯三郎。なかでも、特筆すべきはナースになることに反対していた美津に、りんが自身の決意を話すシーンだ。

 りんの瞳からこぼれ落ちる大粒の涙。信右衛門が亡くなった際にも泣かなかったりんが涙を流したのは、奥田家で“女”が生まれたことに落胆する亀吉(三浦貴大)と貞(根岸季衣)に対してだったが、今回は自身を恥じる悔しさからの落涙。武家の娘に生まれたりんだったが、どこかマイペースで不器用な性格が邪魔をし、間違えてばかりの人生だった。美津のような武家の女性らしく気位が高い奥様になりたかった。けれど、そうはなれずに“負け戦”となってしまった。ただ、りんは何者でもない。環(宮島るか)にも示しがつかない。自分の力で生きていかなくてはならなくなった時、学はあった方がいい。その指針となっているのが、信右衛門が遺した「学ぶことは、時に世を渡る翼となり時に身を守る刀になる」という言葉だった。

 美津の嘘の縁談の誘いにもりんは“間違え”、「私と環の人生を嫁ぐ相手に委ねるのはもう嫌なんです。私の双六の上がりは、もう“奥様”じゃない」と告げる。第1話に登場した江戸娘双六の描写がここに帰着している。りんが間違えた先で見つけたのは、ナースになるという揺るがぬ覚悟と恥じぬ己の良心。その思いの強さが涙となって溢れ出し、美津をも認めさせた。「今度こそ、勝ち戦になさい」という美津の愛情が温かい。

 梅岡女学校の入学式、師走日和の門の前に立つりん。そこには髪を短く切った直美の姿があった。気づけば環が連れ去られてから、全く直美の物語が描かれていなかったが、第18話にて直美が捨松に告げた「どれだけ着飾って自分を偽っても、所詮、私はほかの人にはなれないって痛いほど分かったんです。でも、私に戻っても何もない。そのこともよく分かりました」というセリフが、直美のナースになろうとする動機に繋がっている。りんと直美で共通しているのは、頬を伝う涙。そして、何者かになろうとすることよりも、自分を偽らずに生きていきたいという思いが2人の間で強く共鳴している。

 ここから、りんと直美がバディとして支えあいながら成長していく、女学校という新たな風が吹いていく。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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