『風、薫る』『ばけばけ』『カムカムエヴリバディ』 朝ドラが描く“英語”の役割とは

 結ばれた喜びも束の間、夫はすぐに戦地へ赴き帰らぬ人となってしまう。それでも安子は、夫との思い出が詰まった英会話の勉強を、生まれた娘と二人で続けていく。英語が話せたことで、戦後は進駐軍の中尉・ロバート・ローズウッド(村雨辰剛)と交流し、仕事も得ることができた。しかし、家族や嫁ぎ先をめぐるさまざまな事情が重なり、最終的にロバートとともにアメリカへ旅立ってしまう。

『カムカムエヴリバディ』安子はなぜ英語を学ぶのか 娘・るいの問いに答えられない理由

昨日である2021年12月8日、あの真珠湾攻撃から80年が経った。1941年に起きたそれをきっかけに、安子(上白石萌音)は稔(松…

 母に出奔された娘のるい(深津絵里)は心に深い傷を受け、長年母を許せないでいた。それでも、ラジオの英会話を絆として続けている。そしてその娘の大月ひなた(川栄李奈)は、母に習って英語を学ぼうとはするものの何度も挫折。映画村に就職したことで訪日外国人の案内を担うようになり、必要に迫られて英語を学び始める。気づけばハリウッドの一行をもてなすまでに成長し、その中に行方知れずの祖母がいて……という点と線がつながる展開に、涙した視聴者も多かったことだろう。

 移民として日本語を手放し英語を習得した祖母、英語を憎みながらも憧れ続けた母、そして英語によって自信を得て、通訳として世界での活躍を手にした孫娘。三者三様の英語との関係が、それぞれの時代と重なりながら丁寧に描かれた作品だった。

 そして、記憶に新しい『ばけばけ』(2025年度後期)にも英語が登場した。小泉八雲ことラフカディオ・ハーンとセツ夫妻をモデルにしたこの物語では、日本人の目を通した西洋ではなく、西洋人の目を通した日本が英語で語られた。英語を学ぶことで、女性が世界を切り拓いていった今までの作品とは少し趣を異にしている。ヒロインのトキ(髙石あかり)自身の英語はほとんど上達せず、むしろ日本の文化と精神を体現する存在としてヘブン(トミー・バストウ)の前に立っていたように思う。

『ばけばけ』吉沢亮が“英語だらけ”のセリフ披露? トキとヘブンをつなぐ架け橋に

映画『国宝』等で活躍の吉沢亮が朝ドラ『ばけばけ』に登場。苦境のヒロインを導く英語教師・錦織友一役で、希望の存在として期待される。

 従来の朝ドラのヒロインたちが英語を通して海外の考えを取り入れ、新しい扉を開き、日本の枠を飛び越えて活躍してきたとすれば、『ばけばけ』はその逆を描いた作品とも言える。ちなみに、『ばけばけ』では、錦織友一を演じた吉沢亮の英語の上達にも注目が集まった。俳優たちが英語のセリフに奮闘するところも見どころのひとつかもしれない。

 『風、薫る』の時代は、トキが生きていた時代に近い。主人公のりんもまた、士族の娘として生まれながら武士の世の終わりとともに職業婦人への道を歩み始めており、その境遇が重なる。西洋の思想や言葉と、どのように向き合い、何を手に入れていくのか。英語を通したこれからの学びと成長がどう描かれるのか、注目していきたい。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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