『平場の月』大人のラブストーリーが心に響く 舞台裏を知ることができる貴重な特典を解説

 原作にない描写としては、劇中歌で流れる薬師丸ひろ子の「メイン・テーマ」や、青砥が江口(大森南朋)ら同級生4人と居酒屋で飲むシーン、青砥の母の葬儀での須藤と元妻のみづき(吉瀬美智子)の対面も挙げられる。青砥と須藤をとりまく世界を丁寧に描くことで、物語に広がりと奥行きを生んでいる。

 なかでも印象深いのが、須藤が「いつも青砥を見ていた」と告白するシーン。小説では大人だが、映画では15歳の二人に変更された。朝倉も鼎談でこのことを指摘している。これによって、須藤と青砥の思いが長い歳月を経てつながっていることが伝わってきた。

 鼎談では大人の恋愛も話題に。朝倉によると、小説の出版時に同年代の手記を募集したところ、予想以上に反響があったそう。同年代の恋愛を描く今作について、井川は「職業ものや母親役とは違う、何者でもないありのままの自分」を役柄に投影した。「今の生活のリアリティを落とし込める場があること」に感謝する井川にとって、特別な作品となった。

 個人的に『平場の月』は、幸せの極致で隣にいる相手の気持ちが見えなくなってしまうことや、男という生きものの愚かしさ、あるいは卑屈な自身を観ているようで、刺さりすぎる映画だった。一方で、愛する人を失う喪失感はありながらも、死の瞬間まで相手を思い、この世を去った後も思われる姿を見て、なんてぜいたくで幸せな失恋だろうとも感じた。

 井川は、カットがかかった瞬間、それまで必死にこらえていた涙を抑えることができなかったと語っている。その涙は、須藤がいない世界を生きる青砥を思ってのものだ。今作の主題歌は星野源の「いきどまり」。ラストで流れるこの曲が、観る者の気持ちを優しく包む。堺は、「いきどまり」というタイトルが、「生きて」「とどまる」ことのダブルミーニングになっていると指摘している。

 月がそこにあるように、平場で出会った二人の恋は、いつまでも記憶の中にあり続ける。『平場の月』を観るたびに、そこに思いがあることを知るのだろう。

■リリース情報
『平場の月』
4月24日(金)Blu-ray&DVD発売

【Blu-ray豪華版 2枚組】
価格:8,580円(税込)
品番:TCBD-1949
仕様:2025年/日本/カラー/本編118分+特典映像/2枚組
(本編Blu-ray)16:9 1080p High Definition ビスタ/2層/①DTS-HD Master Audio 5.1ch ②日本語音声ガイドDTS-HD Master Audio 2.0ch/バリアフリー日本語字幕
(特典DVD)16:9LB/片面2層/ドルビーデジタル2.0chステレオ/字幕なし

【DVD豪華版 2枚組】
価格:7,480円(税込)
品番:TCED-8594
仕様:2025年/日本/カラー/本編118分+特典映像/2枚組
(本編DVD)16:9LB ビスタ/片面2層/①ドルビーデジタル5.1chサラウンド ②日本語音声ガイドドルビーデジタル2.0ch/バリアフリー日本語字幕
(特典DVD)16:9LB/片面2層/ドルビーデジタル2.0chステレオ/字幕なし

【DVD】
価格:4,400円(税込)
品番:TCED-8595
仕様:2025年/日本/カラー/本編118分/16:9LB ビスタ/片面2層/①ドルビーデジタル5.1chサラウンド ②日本語音声ガイドドルビーデジタル2.0ch/バリアフリー日本語字幕/1枚組

<特典映像> ※豪華版のみ収録
・メイキング&インタビュー
・堺雅人×井川遥×朝倉かすみ 特別鼎談
・イベント集(製作報告会見/完成披露試写会/初日舞台挨拶/御礼ティーチイン舞台挨拶)
・特報・予告・CMスポット
・スペシャルロングトレーラー

<封入特典>
・映画『平場の月』台本

出演:堺雅人、井川遥、坂元愛登、一色香澄、中村ゆり、でんでん、安藤玉恵、椿鬼奴、栁俊太郎、倉悠貴、吉瀬美智子、宇野祥平、吉岡睦雄、黒田大輔、松岡依都美、前野朋哉、成田凌、塩見三省、大森南朋
原作:朝倉かすみ『平場の月』(光文社文庫)
監督:土井裕泰
脚本:向井康介
主題歌:星野源「いきどまり」(スピードスターレコーズ)
制作プロダクション:TBSスパークル
配給:東宝
発売元:TBSスパークル
発売協力:TBSグロウディア
©︎2025「平場の月」製作委員会

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