『月夜行路』麻生久美子が体現した“息苦しさ” 波瑠との出会いで動き出す新感覚ミステリー
ルナという少し現実離れした存在が現れたことで、涼子が抱えていた行き詰まりが、かえってくっきり見えてくるのもこのドラマのおもしろさだ。菊雄の服に入っていた「SHUFFLE」と書かれた名刺を手がかりに、涼子は夜の銀座で夫の尾行を始める。ここまでは夫の不倫を疑うサスペンスとして進んでいくが、ルナと出会ったことで空気が一変する。「会いたいですか?」と問われ、涼子が思わず「会いたい」と本音をこぼした直後、気づけば大阪へ向かう車に乗っていたという展開はかなり唐突だ。それでも不思議と無理がないように見えるのは、涼子自身が今の生活に息苦しさを感じ、このまま同じ場所にとどまることに限界を迎えていたからだろう。
大阪に着いたルナが、谷崎潤一郎の『卍』に胸を躍らせ、聖地巡礼のように街を楽しむ姿も印象的だった。他にも近松門左衛門『曽根崎心中』、谷崎潤一郎『卍』、渡辺淳一『失楽園』、横溝正史『犬神家の一族』、アガサ・クリスティ『オリエント急行殺人事件』と、初回からさまざまな作品が登場するが、それらは知識の披露に終わらず、事件や登場人物の行動にしっかり結びついていた。
特に『曽根崎心中』の舞台・露天神社で見つかった男女の遺体をめぐるくだりには、本作の持ち味がよく出ていた。曽根崎で男女が死んでいれば、誰もが心中を思い浮かべる。だが、その思い込み自体を利用したのだとしたら――。涼子のひと言をきっかけに、ルナの文学的知識が真相へとつながっていく流れは鮮やかだった。真犯人は、夫の不倫相手になりすまして無理心中を装っていた愛子(佐々木希)。名作の知識が、ただ事件を彩るためではなく、真相を解く鍵として機能していたのが新感覚で面白い。
ただ、第1話の魅力はそれだけではない。文学は事件を解くための道具である以上に、涼子の人生を少しずつ動かしていく装置にもなっていた。アンデルセンの「To travel is to live」という言葉の通り、この旅は単なるカズト探しでは終わらないはずだ。文学を愛するルナと、文学によって本音を引き出されていく涼子。そのふたりの出会いが、この先どんな景色を見せてくれるのか。初回は、この先の旅がどう広がっていくのか楽しみになる内容だった。
■放送情報
『月夜行路 ―答えは名作の中に―』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:波瑠、麻生久美子、栁俊太郎、作間龍斗(ACEes)、渋川清彦、田中直樹
原作:秋吉理香子『月夜行路』(講談社)©︎秋吉理香子/講談社
脚本:清水友佳子
音楽:Face2fAKE
チーフプロデューサー:道坂忠久
プロデューサー:水嶋陽、小田玲奈、松山雅則
トランスジェンダー表現監修:西原さつき、若林佑真、白川大介
演出:丸谷俊平、明石広人
制作協力:トータルメディアコミュニケーション
製作著作:日本テレビ
©︎日本テレビ
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