『豊臣兄弟!』中島歩が演じる“託す者”の余韻 『信長協奏曲』高橋一生との共通項も

 『信長協奏曲』最終話での長政の最期は涙なしに見られない。戦のない世界を夢見ながら生まれた場所と時代に引き裂かれた長政は、自らの命を賭して平和な世への願いを託した。高橋の魂の演技が作品のテーマを体現していた。

 中島が浅井長政を演じると知って、頭に浮かんだのは『あんぱん』(NHK総合)の若松次郎(中島歩)だ。次郎は主人公のぶ(今田美桜)の最初の夫で、終戦直後にのぶを残してこの世を去った。次郎が登場する回は多くなかったが、軍国思想に染まったのぶが再出発するきっかけを作ったのが次郎だった。

 のぶは、次郎の愛用のカメラと「走れ、絶望に追いつかれない速さで」という言葉を胸に、自身の過ちを見つめ、戦後を駆け抜けた。平和な時代に願いを託した次郎は、「逆転しない正義」という作品のテーマを語る上で欠かせない人物だった。

 後に続く人々に思いを託して逝った次郎と浅井長政には共通項があり、中島歩が演じることで両者は響き合う。想像力の広がりを生む余白が中島の演技にある、とも言い換えられよう。

 『豊臣兄弟!』で男に生まれたかったとこぼす市は、次第に長政に惹かれ、没後に遺児を育てる。『あんぱん』ののぶのように時代にほんろうされながらも、思いを受け取り、自らの人生を生きることで作品のテーマを次世代に継承する役だ。

 中島はインタビューで、長政について「愛に生きる誠実な人物」と印象を語っている。今作が史実どおりなら、長政は信長を裏切ることになるだろう。長政が弓を引いた理由には諸説あり、近江の国人を束ねる立場上、やむを得なかったとも言われている。ドラマでその辺りの事情がどのように描かれるかにも注目だ。

 その柔らかなまなざしの奥で、中島演じる浅井長政は何を見つめているだろうか。名将の雄姿をこの目に焼き付けたい。

参考
「NHK大河ドラマ・ガイド『豊臣兄弟!』前編」

■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石 聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P52L88MYXY
公式X(旧Twitter):@nhk_toyotomi
公式Instagram:@nhk_toyotomi

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