生見愛瑠による音楽映画の新たなマスターピース 『君が最後に遺した歌』道枝駿佑と紡ぐ言葉

 音楽はひとりできる表現である一方で、人との出会いが不可欠なもの。そんな両極端なところにある。

 例えば、春人に限らず、萩原聖人演じる叔父の正文のように、様々な人に支えられながら生きていることをカジュアルなかたちでありながらも、ずっしりと感じさせてくれる。

 予告やタイトルでもわかってしまうが、突然、病気になる展開がある。これに対して、取って付けたような展開と思うかもしれないが、いってしまえば、病気なんてそんなものだ。

 原作にもある展開のため、闘病パートは省くことはできなかったとしても、中盤にある幸せ絶頂な状態で『プッシーキャッツ』(2001年)のように完結させてもよかったと思えるのは、人間ドラマとしての構成自体がしっかりしているからだ。

 逆に全編にわたって、病魔の影がつきまとう演出は、やろうと思えばいくらでもできたはずが、それをしていないのは、闘病ものとしての側面を強調したくないからだろう。これは『ファンファーレ!ふたつの音』(2025年)のエマニュエル・クールコル監督と同じマインド。つまり“出会い”と“音楽の力”を大切にしたかったからに違いない。

 闘病ものとしての側面が協調されていない理由はもうひとつあって、それは2月に公開されたばかりの『ほどなく、お別れです』に続いて、遺された者の視点の切り取り方に長けている三木孝浩が監督を務めていることに加えて、吉田智子が脚本として参加している点も大きい。

 吉田といえば、『君の膵臓をたべたい』(2017年)の脚本家としても知られているが、こちらも遺された者の視点から、物事を描くことに長けている。つまり今作が扱うテーマとしては最強タッグ。

 闘病ものという、あるのか、無いのかわからない、そんなジャンルに頼って、それなりの感動作品として完結させるよりも、「いつまでも生き続ける言葉=歌」という着地点を提示したのは、今作が唯一無二である証拠であり、カジュアルでありながらも、しっかりとテーマを主張してくるのは、生見愛瑠と道枝駿佑の演技力が奥行を持たせているから。

 もう一度言うが、今作は日本の音楽映画における、新たなマスターピースだっ!!

■公開情報
『君が最後に遺した歌』
全国公開中
出演:道枝駿佑、生見愛瑠、井上想良、田辺桃子、竹原ピストル、岡田浩暉、五頭岳夫、野間口徹、新羅慎二、宮崎美子、萩原聖人
原作:一条岬『君が最後に遺した歌』(メディアワークス文庫/KADOKAWA 刊)
監督:三木孝浩
脚本:吉田智子
音楽プロデュース:亀田誠治
制作プロダクション:TOHOスタジオ
配給:東宝
©2026『君が最後に遺した歌』製作委員会
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