鈴木敏夫&宮﨑吾朗が語る、“85歳でも衰えぬ”宮﨑駿の凄さ 「パノラマボックス」初公開

 宮﨑駿による最新の仕事「パノラマボックス」の取材会が3月14日にスタジオジブリ第1スタジオにて行われ、プロデューサーの鈴木敏夫と監督の宮崎吾朗が登壇した。

スタジオジブリ 第1スタジオ

 宮﨑駿が手がける「パノラマボックス」は、箱の中をのぞき込むことで奥行きある風景が立ち上がる立体的な絵画作品。キャラクターや背景を層状に配置することで、映画のワンシーンのような空間を生み出すもので、2026年7月8日よりジブリパーク「ジブリの大倉庫」にて展示予定だ。

『君たちはどう生きるか』インコ帝国 ©Hayao Miyazaki/Studio Ghibli

 「パノラマボックス」は宮﨑駿が発明した言葉であり、本人いわく子どもの頃にキャラメルのおまけで遊んだ体験が原点になっているという。三鷹の森ジブリ美術館で展示されている作品では、透明のガラス板に描かれたパーツが組み込まれているが、今回の新作ではその手法とは異なり、ガラスを使わずすべて紙で制作されている。宮﨑駿は制作中、「子どもの頃にパノラマボックスのようなものを夢中になって作った」と繰り返し語っていたという。紙に描いた絵を切り抜き、幾層にも重ねた空間をのぞくことで、見る角度によって異なる景色が現れる。アニメーションの画面構成に長年携わってきた宮﨑駿は、そうした原体験に立ち返りながら、それぞれの箱の中に新たな世界を立ち上げている。

鈴木敏夫

 鈴木はその魅力について、「これは古い話なんですけど、『もののけ姫』のキャンペーンでアメリカのニューヨークに行ったときに、このパノラマボックスみたいなものがあったんです。(宮﨑駿は)子供っぽい人っていうのか、『どういう仕組みで、これはどうやって見えるんだ』と興味を持つんですよね。隅っこの隅までキャラクターとかいろんな隠し要素みたいな面白いものが描いてありますよね。そういうのも、宮﨑さんの遊び心。『いいのができたから見て』って言ってくる。どっちか言うとそういう感覚で作っているんじゃないですかね」と語る。

宮﨑吾朗

 また、宮﨑吾朗は、父である宮﨑駿の近況について「今年の1月に85歳を迎えまして。そろそろかなと思ってたら、やたら元気です。血液検査の数値が僕よりいいんです」とユーモアを交えて明かす。さらに幼少期のエピソードとして「小学校の低学年ぐらいですかね。『宇宙戦艦ヤマト』が流行った頃に模型を作ろうと思ったけど、お金がなかったんで紙で設計図を書いてたんです。でも写真だと後ろのほうがよく見えなくて、朝起きたらここに設計図が完成させられていたことがありましたね」と振り返った。

 質疑応答では、宮﨑駿の創作意欲についても言及があった。鈴木は「映画を作りたいっていう感情は出すんです。でも、雨が降って雲が多いと、もうやる気がなくなるんですよ(笑)。体調の悪い日は『もう映画なんか作るときじゃないんですよ、鈴木さん』とか言ってみたり。それを繰り返してます」と近況を語った。

鈴木敏夫

 さらにスタジオジブリの現在地について、「ジブリは映画を作る会社としていろいろやってきましたけれど、ジブリパークでは映画でやったことを立体にしようと。その吾朗くんの挑戦がうまくいった。また新たなことをやっていく途中なんですよね。そういう中で、宮﨑さんの制作物を披露できるということは第1歩かもしれません。僕の個人的感想としては、絵の力が衰えていないというか、さらに進化してます」と語る。続けて「吾朗さんがジブリパークを作ってきた。で、あの人(宮﨑駿)は人が作ったものにあまり興味ないんです。吾朗さんを否定して自分が前に出る絶好の機会なんですよ。だからあんなに面白いものを作る。それがあの人の原動力なんですよ。相手が誰だろうが関係ない。人に負けないで自分が面白いもの作って、それを世界に出して、どうだと。そういう人です」と述べ、宮﨑駿の創作の根源にある姿勢を明かした。

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