『ミルキー☆サブウェイ』亀山陽平のルーツとは? バッグス・バニーなどの“原点”を明かす
亀山陽平から見た日本のアニメの良さ
——『ミルキー☆サブウェイ』は絵コンテ(※作品全体の構成を設計する設計図。カット割り、構図、動き、セリフ、時間配分などを絵と文章で示した制作初期の資料)ではなくビデオコンテ(※簡易的な映像・音声を組み合わせて作る仮編集映像。完成形に近い形でテンポや演出を確認するために用いられる)から作られたとのことですが、ビデオコンテの良さを亀山さんはどう感じていますか?
亀山:『ミルキー☆サブウェイ』は映像のカッコよさよりも会話劇のテンポを優先させたかったので、まず音を聞き取れるビデオコンテから作ったほうがいいと判断しました。もちろん、もっとストーリーや映像で話を伝えることに注力して作品を作ろうと思ったら、しっかりした文章や絵コンテから始める必要があるのかなと思っています。ただ、脚本はあったほうがいいと思うんですが、もしかすると今の時代は絵コンテよりビデオコンテから作りはじめてもいいのかもしれません。スマホひとつですぐ音や声を収録できますし、ラフな映像なら絵がうまい人であればお絵描きツールを使えばすぐ描けてしまうので、ビデオコンテから入る手法があってもいいのかなと思っています。
——ビデオコンテにすると具体的にどういったところが作業としてよいのでしょうか?
亀山:ビデオコンテはまず、映像の完成形を直感的に理解しやすいんです。「この尺で本当にちょうどいいかどうか」がわかります。絵コンテだとカットごとのラフ画があって、横に「尺は⚪︎秒、⚪︎フレーム」と書かれてはいますが、その秒数がその映像に適切な長さなのかどうかは、だいぶ経験のある人でないと想像つかないと思います。だから僕が、ビデオコンテで作りやすかったのは、自分が映像経験の薄い素人だったからというのも影響しているかもしれなくて……。その情報量にはどれくらいの尺が必要なのかということをビデオコンテだと一目で確認できるので、その点はよかったのかなと思います。あとは制作前のアニメの企画を通さなければならないといったとき、たぶん『ミルキー☆サブウェイ』の内容を絵コンテで描いて渡しても、面白いのかどうか想像つかないと思うんですよね。
——たしかに『ミルキー☆サブウェイ』ほど音ハメを軸に物語が進行していくような作品だと、静止画と文字だけでイメージを共有するには限界がありますね。
亀山:一方で絵コンテの強みは、ストーリーの展開や大まかな流れをリストとして一度に俯瞰して見られるところだと思います。ビデオコンテだと再生しなければ全体の流れが見えず、毎回リニアな確認になってしまうので、大まかな構成の確認をするうえでの利点は絵コンテにあるような気がします。
——制作工程を変えて別作品を手がけることは考えているのでしょうか?
亀山:関わる作品の規模や環境によっては絵コンテから作らないといけないこともあるかもしれないですね。ただ『ミルキー☆サブウェイ』と同じような座組であれば、ビデオコンテにそこまで欠点は感じなかったですし、この方式のまま作るのではないかと思います。
——今後も個人制作にはこだわっていくんでしょうか?
亀山:いえ、作品の需要が大きくなった分、そこにこだわりを持たなくてもいいかなと。提供する側としての責任が増えてきているので、人に任せられるところはお願いして作っていく必要があると思っています。自分の場合は、今は知り合いとスタッフ集めをして活動を広げている段階です。知り合いのクリエイターもいろいろなきっかけで仲間集めをしていますが、ほとんどはSNSでつながっているので、手段に正解はないと思いますが、SNSで主体的に作品をあげたり連絡を取ったりを続けていけば一緒に仕事ができる仲間は見つかると思います。
——『ミルキー☆サブウェイ』の大ヒットについて、先ほどのイベントでは「あまり実感はない」とおっしゃっていましたね。
亀山:当然、妄想として「こんだけ売れてくれたら最高だなぁ」というビジョンはありましたが(笑)、そんなことにはなってくれないだろうと。夢を大きく持ちすぎないようにしていました。だから劇場版まで作らせてもらって、多くの人に観てもらっている今の結果は、本当に想像していなかったレベルまでいっています。ある程度の人に好きになってもらって、ファンアートを描いてもらえるレベルまでいったら嬉しいな……と思っていたくらいです。だからそれ以上に広まって、今ではIPとして描き下ろしをしたり、続編をしっかり展開させないといけなかったりといったところまで辿り着いている現状を考えると、ヒットした嬉しさもありつつ、どんどん増えていく責任感に対して気負いもあります。今日のトークイベントのような舞台はある種の夢ではあったので、おしゃべりも好きですしそれが叶って嬉しい気持ちももちろんありますが、今はそういう場が増えたので、そろそろ制作に戻って集中したいという気持ちもあります(笑)。
——今はすでに何か新しい作品を作っているんですか?
亀山:新しい作品のための環境づくりはしつつ、『ミルキー☆サブウェイ』はやっぱり続けていきたいなという気持ちがありますが、「IPにも賞味期限が来ちゃうんだろうな」とも思っています。そのうち『ミルキー☆サブウェイ』1本ではやっていけないときも来ると思っていますし、そのときは新しいことに挑戦するタイミングだろうなと考えています。
——今後の活躍も非常に楽しみにしています。
亀山:最近は以前ほどハリウッド映画に枠を取られなくなったり、国内コンテンツが想像以上にヒットしていたり、今の日本の劇場にはこれまでにない状況が展開されています。そういう意味では『ミルキー☆サブウェイ』は、オーソドックスな映画と比べるといろいろと不思議なバランスの作品にはなっていると思います。新感覚のエンタメとして、劇場の環境で観てもらえたら嬉しいですし、新しい経験ができるのではないかなと思うので、これをきっかけに劇場に足を運んでもらえれば、と思います。
■公開情報
『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ 各駅停車劇場行き』
公開中
キャスト:寺澤百花(チハル役)、永瀬アンナ(マキナ役)、小松未可子(リョーコ役)、金元寿子(アカネ役)、小市眞琴(カナタ役)、内山昂輝(カート役)、山谷祥生(マックス役)、藤原由林(O.T.A.M.役)、小野賢章(アサミ役)、ロバート・ウォーターマン(ハガ役)
原作・監督・脚本・キャラクターデザイン・音響監督・制作:亀山陽平
企画制作:シンエイ動画
製作:タイタン工業
主題歌:キャンディーズ「銀河系まで飛んで行け!」
挿入歌:水無瀬ミナミ(CV.田村ゆかり)「ときめき★メテオストライク」
プロモーション楽曲:MindaRyn「Altair and Vega」
配給:バンダイナムコフィルムワークス
©亀山陽平/タイタン工業
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