『ばけばけ』第20週は“中だるみ”ではない “何も起きない”からこそ光る髙石あかりの微笑み
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第20週「アンタ、ガタ、ドコサ。」は、焼き網を盗んだのは一体誰なのかという、“焼き網問題”が勃発。その真相はなんとも意外な結末だった。
オチから先に言ってしまうと、クマ(夏目透羽)が失くした焼き網は井戸と壁の隙間に滑り落ちていた。かつて、松江のヘブン邸で、フミ(池脇千鶴)が板の間と釜戸の隙間に箸を落としたことを思い出させる、思わずクスッとしてしまう終わり方だ。
ただ、ストーリーの肝心な部分は、その過程に込められている。焼き網がなくなったことに加え、正木(日高由起刀)探偵の推理が拍車をかけ、松野家は知らぬ間にギスギスしてしまっていた。責任を取って女中を辞めると口にしたクマを思い、丈(杉田雷麟)は懐中時計が盗まれたと嘘をつく。それはアリバイがあるクマをかばうための嘘。しかし、今度はアリバイがない司之介(岡部たかし)とフミ、正木が疑われてしまう。そこで今度は、正木が財布がなくなったと慌てた様子で報告する。家族全員の疑いが晴れたところで、2人は懐中時計と財布は見つかったと、自分たちのそそっかしさを笑い話にする。そうすることで、クマをはじめ、また松野家に笑顔が戻っていた。
丈と正木が、身寄りのないクマや世話になっている松野家を思ってついた嘘は、相手を守るための優しい嘘だった。そのことに気づいたヘブン(トミー・バストウ)は、書斎へと駆け込み、机に向かってペンを走らせる。熊本第五高等中学校の同僚であるロバート(ジョー・トレメイン)は、書くことが何もないと嘆くヘブンに「それは熊本のせいなのか?」と話していた。ヘブンが導き出した答えは、どこにでも日本人の心はあるということ。松江だけでなく、熊本でも変わらず相手を思いやる精神は存在している。新しい焼き網でトーストを焼いたクマが朝餉の時間を知らせるため書斎のふすまを開けると、夜通し書き続けているヘブンが「シャラップ! カンガエ、キエテ、ナクナル!」と怒鳴りつけた。クマだけでなく、丈と正木も初めて見るヘブンの姿だった。それほどまでにヘブンの筆が乗るのは久しぶりだということを伝えていた。
松江を離れ、熊本編に入った第20週は、視聴者としてもいつにも増して何もない、何も起こらない1週間を過ごしていた体感があった。正木探偵によるミステリードラマテイストに笑ってしまう一方で、SNSでは“中だるみ”を指摘する厳しい意見も少なくはなかった。しかし、『ばけばけ』とは元々、何でもない日常を描くということがコンセプトにあるはずであり、結果的に本質は、丈と正木の“良い嘘”、日本人の心にあった。単なる犯人探しでは終わらないだろうとは思っていたが、目を輝かせながらペンを走らせるヘブン=トミー・バストウ、その背中を見つめ微笑むトキ=髙石あかりの芝居に、得も言われぬカタルシスを覚えずにはいられなかった。
記念すべき第100話を終え、『ばけばけ』も残り25回。第21週「カク、ノ、ヒト。」では、吉野イセ(芋生悠)、ラン(蓮佛美沙子)が新たに登場し、トキが呪われるという、心配とドキドキが同居する週になりそうだ。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK