議論呼ぶ『葬送のフリーレン』の魔族描写 『まおむす』『ひめごう』など“優しい魔族”も

 「やっぱりお前達魔族は化け物だ。容赦なく殺せる」――。『葬送のフリーレン』の主人公・フリーレンは、作中を通して“魔族”に一切の情を示さず、排除すべき悪として扱ってきた。しかしこうした冷徹な態度について、違和感を覚えるという人もいるようだ。

『葬送のフリーレン』第2期ノンクレジットエンディング映像/EDテーマ:「The Story of Us」milet/フリーレンED

 本稿では同作の魔族観について考察しつつ、まったく別の角度から魔族を描くアニメについても取り上げてみたい。

 あらためて説明すると、『葬送のフリーレン』は勇者一行によって魔王が倒された“その後”を描く後日譚ファンタジー。作中世界にはエルフやドワーフといった亜人族が存在する一方で、人間を捕食する魔物や、人語を操る魔族が敵として登場する。

 とりわけ魔族は、人類と同じような外見をしていながら、全く異なる行動原理を持つ存在として描かれている。人語を操るため、意思疎通できるように感じられるが、彼らにとっての言葉は人類を欺くための手段にすぎない。

 それを象徴するのが、アニメ第1期の7話で描かれたエピソードだ。かつてフリーレンは、とある村であわれな少女にしか見えない魔族と遭遇したことがあった。その魔族は「痛いよお、お母さん」と命乞いをして、善良な村長から家族として受け入れられるが、最後には殺戮を引き起こす。そこで魔族を追い詰めたフリーレンが、「お母さん」と口にした理由について尋ねると、「だって殺せなくなるでしょう」という言葉が返ってくる。

 こうした経験から、フリーレンは「人の声真似をするだけの言葉の通じない猛獣」であり、「魔族との対話なんて無駄な行為だ」と考えるように。ほかにも作中では魔族がどこまでいっても人間と相容れない存在であることが繰り返し描かれている。

 魔族は人間を食料としか思わない猛獣なので、一切の情をもたずに始末する……。それがフリーレンの態度だ。こうした描き方について、SNSの一部では「差別的」だという指摘も上がっており、賛否を呼んでいた。

 もちろん作中の設定でいえば、魔族は対話不可能で凶悪な種族として描かれているため、フリーレンの判断は合理的だ。とはいえ同意したいわけではないものの、そうした隙のない設定で“人類の敵”を造形すること自体に「世界は敵と味方に分けられる」「敵は相互理解できない存在だから排除するしかない」といった勧善懲悪的な想像力を感じてしまう人がいることはあり得るように思う。

関連記事