“信長”岡田准一&小栗旬、“家康”松本潤&松下洸平 『豊臣兄弟!』と『どうする家康』を比較

 日曜20時にバーサーカー大河(戦国大河)が帰ってきた。2023年の『どうする家康』以来、実に3年ぶりである。『光る君へ』『べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜』と続いたクリエイター大河(文系大河)も、まごうことなき名作だった。筆者も物書きのはしくれとして、紫式部(吉高由里子)や恋川春町(岡山天音)らを、ご先祖様だと思って観ていた。おそれ多くも。ただ、「文武両道」という言葉があるように、「文」と「武」は等分に摂取しなければならない。2年続けて秀逸な「文」を十二分に摂取した。ならば今年は、その分枯渇していた「武」を急ぎ補給する年だ。

 本年のNHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』は、あの豊臣秀吉(池松壮亮)の弟、豊臣秀長(仲野太賀)を主人公とした物語だ。秀吉の名参謀として、秀吉を描く際には必ず登場する人物ではありながら、あまり大きくクローズアップはされなかった。貧しい出自から転じて時代の主人公となり、そして闇落ちしていく兄の姿を弟視点で観る物語の、おもしろうてやがて悲しき展開に、今から期待している。

 3年前の『どうする家康』と本作は、まったく同じ時代を描いている。したがって、演者は変わりながらも、歴史上の同じ人物が主要キャラとして登場する。そうなると、両作の同一人物について比較検証したくなるのが大河ファンのサガである。主人公・秀長および秀吉については、いずれ彼らだけを深掘りした記事を書くことになるだろう。本記事では、彼ら以外の主だった武将たちを取り上げる。

織田信長

 戦国大河となると真っ先に取り上げなければならないのが、“戦国の風雲児”織田信長である。『どうする家康』では岡田准一が、『豊臣兄弟!』では小栗旬が演じている。

 岡田信長については、放送当時に深掘り記事を書いた。

『どうする家康』岡田准一の信長は大河史上最強で最弱だった 武道家が“岡田信長”を解説

今年度のNHK大河ドラマ『どうする家康』において、織田信長役が岡田准一と聞いた時、一抹の不安を覚えた。岡田准一が演じるからには、…

 その圧倒的な威圧感は、まさに第六天魔王であった。この威圧感は、なかなか演技だけで出せるものではない。中の人がガチで強いという要素が、このオーラを醸し出している。長い大河ドラマの歴史において何度も登場した信長だが、この岡田信長は過去最強の信長だった。
 
 と同時に、もっとも孤独な信長でもあった。多くの作品で、愛妻かつ参謀かつよりどころとして描かれた、濃姫(帰蝶)が登場しない。もっとも信頼のおける部下として描かれがちな秀吉(ムロツヨシ)のことも、まったく信用していない。信じているのは、うつけと呼ばれた若年の頃に、共に練磨した家康だけである(家康からすれば、トラウマになるほどの地獄の日々だったようだが)。最期は家康に殺されることを望むが、実際に信長を討ち取るのは、小者(として描かれている)の明智光秀(酒向芳)という虚しさ。「なんだお前か……」という落胆の表情が忘れられない。

 一方、小栗信長も、威圧感では負けていない。2022年の大河『鎌倉殿の13人』後半戦における闇落ち後の北条小四郎義時のような、底知れない怖さをすでに醸し出している。……醸し出してはいるが、中の人のかわいさがちょこちょこ垣間見えるところが魅力でもある。がんばって第六天魔王を演じているが、根はいい人なのではないか。まだ4話目にして、正体がバレつつある。

 第1話で、おそらく視察のためだろうが人夫に化け、しっかり肉体労働しているところもかわいい。ただ監視するだけのつもりだったのに、小一郎(後の秀長)に乗せられて断りきれなかったのではないか。

 藤吉郎(後の秀吉)が火縄銃に当たって死んだふりをしたときの狼狽ぶりも、良い。藤吉郎のこと大好きじゃないか。これが岡田信長なら、仮に本当にムロ藤吉郎を射殺しても、表情ひとつ変えないように思われる。ムロ藤吉郎が「ウソでした~」てな顔で蘇生しようものなら、改めて10発くらい撃ち込んでトドメを刺しそうだ。

 現時点での岡田信長と小栗信長のもっとも大きな違いは、桶狭間の戦いの描き方である。岡田信長は、その戦闘シーンすら描かず、気づいたら今川義元(野村萬斎)の首をぶら下げていた。疲れも見せず、顔や鎧にも汚れひとつない。いかに楽勝だったかが伺える。

 小栗信長の場合も、義元(大鶴義丹)を討ち取る場面は描かなかった。彼も、部下たちの前では「勝って当然」かのような顔をしている。だが城の自室に帰るなり、大の字に寝そべって「勝った勝った勝った勝った……」である。喜びというよりも、心底ホッとしたのだろう。妹のお市(宮崎あおい)が見ていたからこれぐらいで済んだが、本当に1人だったなら、もっとジタバタと悶え喜んでいたと思われる。

徳川家康

 続いて取り上げるべき人物は、やはり“戦国の覇者”徳川家康であろう。『どうする家康』では松本潤が、『豊臣兄弟!』では松下洸平が演じている。松潤家康についても、放送当時に深掘り記事を書いた。

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 どちらの家康も、桶狭間の戦いが初登場となる。着用している鎧も、どちらもあのキラキラの金陀美具足である。だが、キャラクター像は真逆だ。まだ若年ながらも冷静沈着、今川方からの信頼も厚そうな松下家康に対し、この時期の松潤家康は、まだ弱虫・泣き虫・鼻水たれである。ちょっと前まで、人形を飛ばして「ぶ~~ん、待て待て~」とか一人遊びをしていた頃である。基本、毎回「どうすりゃええんじゃ~!」と頭を抱え、このときも戦場から逃げ出す。そこを家臣のはずの本多忠勝(山田裕貴)に槍を投げつけられ、足蹴にされながら連れ戻される。大河史上、もっとも弱そうな家康であった(この時点では)。

 一方、冷静沈着キャラかと思われた松下家康も、桶狭間の敗戦が決まると、やや雲行きが怪しくなる。みなが撤退する中、ひとりマンガ盛りの白飯を食う。せっかく自分が運んだ兵糧を信長に取られるのは癪だから、少しでも減らしてやるためらしい。意外におもしろキャラの片鱗を見せ始め、俄然期待値が上がる。

 家康は、この後信長と同盟を結ぶ。つまり、豊臣兄弟との絡みも増えるはずだ。予想としては、家康のひとりボケに対する豊臣兄弟のWツッコミではないかと。

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