『ばけばけ』サワはなぜプロポーズを断った? 制作陣が“アナザートキ”に込めた思い

 髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。

 第17週では、トキ(髙石あかり)の幼なじみ・サワ(円井わん)の恋模様が丁寧に描かれた。お相手は、英語教師就任を打診され松江にやってきた庄田多吉(濱正悟)。

 これまで小学校の正規教員を目指して頑張り続けてきたサワだけに、「庄田と結婚して幸せになってほしい」と願う視聴者はたくさんいたはず。だが、彼女が選んだのはプロポーズを断るというまさかの答えだった。

 制作統括の橋爪國臣は「僕も、みなさんがその理由についてどう考えているのか、気になっています」と本音をこぼしつつ、「サワが自分自身を縛ってしまっているから」だと、決断の背景を説明する。

「サワは“アナザートキ”で、トキにもサワのような人生があったかもしれないし、逆にサワにもトキみたいな人生があったかもしれない。2人は対になっていて、その中で庄田が言っていたように、トキはシンデレラです。でも、自分が何かを成し遂げたかというと、成し遂げてはいない人。一方、サワはトキが近くにいるからこそ、“自分はそうじゃない”という呪縛にかかっているんです」

 さらに橋爪は「なみ(さとうほなみ)が最初から話していましたが、『結局、女は身を売るか、男にもらわれるしかない』。それもきっとサワにとって呪縛になっているし、トキの『私たちと違ってサワは自分の力で(長屋を出る)』という言葉もまた、サワを縛り付けることになったのではないか」と、彼女が知らず知らずのうちに引き受けてしまった役割を語る。

「でも、人生ってそういうことがありますよね。自分が立てた目標のせいで、自分が縛られてしまう。きっとサワは、庄田と結婚しても幸せになれるし、養ってもらいながら自分が教師を続ける道もあったと思うんです。でも、自分自身を縛ったことによって、それをみすみす手放してしまった。そして、それを自分もよくわかっているからこそ、最後に『全部トキのせいだ』と泣くんです」

 橋爪によると、サワが最終的にどんな道を選ぶのか、その結末は明確に見えない状態で撮影は進んでいった。

「最初は、サワがトキを妬んで意地悪するようなこともあるかもしれない、という意見も出ていました。いろんな可能性を残す中で、最終的には意地悪をしない方がサワらしいよねと。彼女は他人を傷つけるのではなく、無意識に自分自身を縛りつけていく。そういう生きにくい生き方をしている子なんじゃないか、という話になりました」

 第85話で「トキのせいだ」と大泣きしたサワ。橋爪は「『切ないけど、サワの気持ちもわかる』と言いながら撮影していました」と、円井の様子を振り返る。

「今までずっとトキが泣いていたけれど、今度はトキがサワを受け止める。きっとトキは、サワがなんで泣いているか、本当のところはよくわかっていません。でも、それを受け止められるのが親友であって、その関係はきっと続いていくんだろうね、という話を円井さんともしていました」

 男性に頼るのではなく、己の力で道を切り開いていく。それはこれまでの朝ドラヒロインに通ずるマインドで、橋爪も「『なんとか自力で長屋を出てやろうと教員免許を取って、女性の地位が低かった時代に、その地位を勝ち取っていく。ストーリーだけ見ると、今まで朝ドラが描いてきたヒロインの道筋そのものだと思う」と話す。

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