マット・デイモン×ベン・アフレックのコンビ再び 『Rip/リップ』が描く警察官のリアリティ

 銃社会アメリカで働く警察官は、日常的にリスクにさらされ、プレッシャーも大きい。危険の割に報酬が見合わないと考える者も少なくない。もちろん、だからといって不正や着服をしていいわけではないし、BLM(ブラック・ライヴズ・マター)運動が大きく盛り上がる契機となった、警官による人種差別を理由にしたといわれる、歴史的におこなわれてきた市民への暴行の言い訳にもならない。

 だが、『セルピコ』(1973年)などに代表される、汚職警官の映画が絶えずアメリカで撮られてきたように、警察の腐敗がアメリカ社会に蔓延ってきた背景には、そういった警察内部にフラストレーションがたまっている現実があるというのは、事実ではあるのだろう。本作でのデインとJDとのぶつかり合いや、警察官たちが苦悶する描写によって、そうした現場の心理が表現されている。

 だから、捜査の際に「リップ(押収)」したという警官たちを、後に抜き打ちで尋問すると、“金額が合わない”など、口裏合わせの不備が露わになったりもする。それが、本作で警官たちが同じ額を口にするシーンに、ある種の感慨がこもっている理由なのだ。しかし一方で、そこを感動的に演出するというのは、“いったいどれだけアメリカの警官は信用がないんだ?”と、思わずにいられないのである。

 ちなみにだが、では日本の警察がクリーンかというと、もちろんそうではない。『ポチの告白』(2009年)や、『日本で一番悪い奴ら』(2016年)などの日本映画の参考になったように、汚職事件は度々起こっている。

 そういった映画や本作『Rip/リップ』が撮られることは、現実の社会に腐敗が存在するという事実を物語っているといえる。しかし逆に考えるならば、そのような映画を撮って公開できるということは、権力を批判できる言論が機能している証左にもなり得る。現実に問題があることを知らしめるという意味で、そういった映画作品は貴重だともいえるし、それができなくなっていく流れに抗うことが、健全な社会にしていく上で必要なことだともいえる。

 本作の出演陣のアジア系の俳優にも言及しておきたい。TVドラマ『ウォーキング・デッド』で注目され、『ミナリ』(2020年)や『NOPE/ノープ』(2022年)でも印象深い役を演じていた、韓国系アメリカ人の俳優スティーヴン・ユァンは、すでに映画ファンにも馴染みの“顔”だろう。彼もまた麻薬対策班の捜査チームの一員を演じていて、劇中で不穏な動きを見せてくれる。

 そして、デインやJDを取り調べるFBI捜査官を演じている、日系アメリカ人俳優の辻大介もまた、映画やドラマで活躍する俳優だ。彼は、名作ゲーム『Ghost of Tsushima』の主人公である、冥府から戻った侍・境井仁のモデルとなったことで、世界中のファンを興奮させ涙させた“顔”でもある。

 近年の大作ゲームは大作映画以上の製作費をかけることも多く、『Ghost of Tsushima』は膨大な数のプレイヤーに支持されているタイトル。筆者もファンの一人だ。その意味で辻大介は、もはやスターといっても過言ではないだろう。そんな辻大介のさまざまな活躍を、今後も楽しみにしたい。

■配信情報
『Rip/リップ』
Netflixにて配信中
出演:マット・デイモン、ベン・アフレック、スティーヴン・ユァン、テヤナ・テイラー、カイル・チャンドラー、スコット・アドキンス、カタリーナ・サンディノ・モレノ、サッシャ・カジェ、ネスター・カーボネル、リナ・エスコ
監督:ジョー・カーナハン
Claire Folger/Netflix © 2025.

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