『豊臣兄弟!』はなぜ豊臣秀長を主人公に据えたのか 一人の天才ではなく“チーム”の醍醐味
秀吉そのものを描くのではなく、誰よりもその近くにいたであろう秀長の目線で、この破天荒な人物を客観的に描き出すこと。それによって秀吉の特異性と異形性は、さらに強く浮かび上がることになるのだろう。けれども、こうは考えられないだろうか。豊臣秀吉という人物が成し遂げた偉業は、秀吉の属人性によるものだけではなく、彼をトップとする「チーム秀吉」とも言うべき人々の“協業”ではなかったのか。他の戦国大名たちのように、生まれながらの家臣などいるはずもない藤吉郎/秀吉は、いかにして自らの強固な家臣団を作り上げていったのか。その際に重要なのは、誰よりも昔から彼のことを知り、なおかつ唯一の血縁者である小一郎/秀長の存在だったのではないか。
ひとり、またひとりと増えていく「チーム秀吉」の面々。差し当たっては、蜂須賀正勝(高橋努)、竹中半兵衛(菅田将暉)あたりになるのだろうか。秀吉は、彼らの何を評価し、どのように口説き落としていったのか。そして、一癖も二癖もある彼らを秀長は、どのような調整によって、秀吉のもとに繋ぎとめていったのか。その頃の秀吉には、権威はもちろん、権力すらなかったにもかかわらずだ。いわんや金銭的なものなどあるはずもなく。
ここで面白いのは、本作の第1話を観る限り、藤吉郎/秀吉は、どうやら必ずしも小一郎/秀長の調整力を買って、自らのもとに呼び寄せたわけではないということだ。恐らく裏切ることはないであろう唯一の血縁者として、弟を呼び寄せたに過ぎないのだ(そもそも8年ぶりの再会だった!)。かくして、右も左もわからないまま飛び込んだ武士の世界の中で、小一郎は自らの居場所と存在意義を見つけ出すため、自身の長所である聞く力と調整力を伸ばしてゆくのだろう。そう、本作は、小一郎の成長物語にもなるはずなのだ。
傑出したひとりの天才の活躍を描くのではなく、多くの魅力と同時に多くの欠点も抱えた人物を補佐する者の成長に焦点を当てることによって、天才と称される人物の属人性をはぎ落し、チーム戦の醍醐味――そう、戦国時代の面白さは、その裏切りも含めて、またたく間に離合集散する人々の思惑の面白さにあるのだ――を描き出すこと。それが本作『豊臣兄弟!』であり、令和の秀吉なのではないか。自らの生命の危機を含めて、藤吉郎・小一郎兄弟の前には、これからさまざまな困難が待ち受けていることだろう。それを彼らは、いかにして乗り越えながら、互いに成長してゆくのだろうか。翻って、そんな彼らの成長物語から、私たちは、この時代のどんな世相や風潮を読み取ることができるのだろうか。今後の展開に期待したい。
■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石 聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P52L88MYXY
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