『ばけばけ』トキ&ヘブンの夫婦生活スタート 文化の違いを乗り越える“本音で生きる”覚悟
『ばけばけ』(NHK総合)第71話では、晴れて夫婦となったトキ(髙石あかり)とヘブン(トミー・バストウ)の新生活が始まった。
司之介(岡部たかし)とフミ(池脇千鶴)は、タツ(朝加真由美)と一緒になった勘右衛門(小日向文世)を残して天国町の長屋を出て、トキたちと暮らすことに。荷物が運び出された部屋は想像以上に狭く、ここで最大5人が生活していたのかと改めて驚かされる。トキはやっぱり、慣れ親しんだ家を離れる寂しさより、ようやく出られるという喜びの方が大きかった。
「行くぞ〜! 待っちょれ、川のあっち側〜!」
旅立ちの日、印象的だったのはサワ(円井わん)となみ(さとうほなみ)の反応だ。天国町という名の地獄でともに励まし合い、生きてきた3人。そこからいち早く抜けた仲間に対して、うらめしい気持ちがないわけではないだろう。でも、トキが家族のために捨て身の覚悟で頑張ってきたことも知っている。いろいろ思うところはあれど、多くを語らず、笑顔でさっぱり送り出すサワとなみの姿がほんのり切なくも温かかった。視聴者としては2人に金一封差し上げたい気持ちだ。
金一封差し上げたいのは、錦織(吉沢亮)も同じ。かつて暮らしていた松江城の近くにある立派な武家屋敷に引っ越したトキたち。走り回れるくらい広い家に住めるのはヘブンの財力あってこそだが、見つけてきてくれたのは錦織だ。みんながはしゃいでいる間も一人黙々と荷物を解いていた錦織。怪談が好きなトキとヘブンのために、大亀伝説の月照寺とゆかりがある和菓子の「若草」を差し入れる心遣いもスバラシ。
そんな錦織の働きもあって和やかに始まった新生活だが、トキには心配事があった。それは、4人で本当にうまくやっていけるか、ということ。言語の違いはもちろんのこと、日本人と西洋人では生活様式が大きく異なる。例えば、睡眠スタイル。今でこそ世界的に見て睡眠時間が短いとされる日本だが、かつては司之介やフミ然り、日の出とともに起き、日の入りとともに寝るのが一般的だった。対して当時から照明技術が発展していた西洋では、夜遅くに作業することもあったのではないだろうか。実際、ヘブンは日中に教師として働き、夜に執筆作業を行うので、寝るのは遅い。
一つひとつは取るに足らない些細な違いでも、積み重なっていけば、大きなストレスとなって破綻に繋がっていく。トキはかつて銀二郎(寛一郎)が突然家を出ていってしまったこともあり、同じ轍を踏まないか不安なのではないだろうか。そんなトキの心情を察してか、ヘブンは自分が松野家のやり方に合わせると申し出る。
その言葉に意外性を感じた人は多いだろう。なにせ、ヘブンはちょっとした生活音にも執筆を邪魔されたと怒るような人だったから。でも、それは自分が「ただの通りすがりの異人」と思っていたからかもしれない。自分はいずれいなくなるのだから、どう思われようと関係ない。だから、好き勝手振る舞っていた部分もあるのだろう。だけど、今はトキにもその家族にもよく思われたいし、うまくやっていきたい。これからも日本で暮らしていくと覚悟を決めたからこその言葉だった。それは「建前」ではなく、心からの「本音」なのだろう。
建前は相手を思いやる優しさでもあるが、長く一緒に生活していくなら、できるだけ本音で向き合う方がいい。早速、トキに「先生」と呼ぶのはやめてほしいと要望を出したヘブン。トキは「そげな親しげな…」と照れ、司之介に「世界で一番親しい二人じゃろう!」と揶揄われる。一貫して平和で微笑ましい回だったが、本当に大丈夫だろうか。松野家の借金や、お給金の件はどうなったのか。気になる点はたくさんある。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK