『レゼ篇』戸谷菊之介に『メダリスト』大塚剛央も 2025年のアニメを支えた男性声優たち
内山昂輝
中堅どころの声優で言えば、内山昂輝の活躍も目立っていた。とくにその魅力が爆発していたのが、気鋭のクリエイター・亀山陽平が手掛けたショートアニメ『銀河特急 ミルキー☆サブウェイ』だ。
同作は銀河を舞台とした壮大なSF作品だが、その最大の特徴はゆるい空気感の会話シーン。魅力的なキャラクター同士が気怠そうに生々しい言葉を交わす様子が、多くのファンを夢中にさせた。そんな独創的な作品にあって、ひときわ魅力を放っていたのが内山の演じるカートだ。
愛想が悪い不良少年のように見えるが、実は意外な素顔を隠し持つ……というキャラクターで、山谷祥生演じる相方・マックスとの掛け合いはクセになる魅力があった。ちなみにカートとマックスのコンビはファッション誌『anan』の表紙まで飾っている。
内山昂輝×羊宮妃那、『ワンダンス』で掴んだ“表現”への想い 「言語を飛び越えられる」
10月8日より放送中のTVアニメ『ワンダンス』は、ストリートダンスを題材に、自分の気持ちを上手く表現できない吃音症の小谷花木と、…ほかにも内山は『SAKAMOTO DAYS』の楽や『東島丹三郎は仮面ライダーになりたい』の雲田巣、『ワンダンス』の小谷花木など、数多くの作品に出演。とりわけ『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』では、約10年にわたって演じてきた死柄木弔役の総決算とも言える演技を披露していた。内山ファンにとってはたまらない1年だったのではないだろうか。
川田紳司
いぶし銀なベテラン声優として、川田紳司の活躍にも触れておきたい。『NARUTO -ナルト-』や『進撃の巨人』、『のだめカンタービレ』などに出演してきた名バイプレイヤーの川田だが、今年は『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』のシャリア・ブル役によって一躍脚光を浴びた。
シャリア・ブルは元々初代『機動戦士ガンダム』にも登場していたキャラクターだが、出番は第39話のみ。本編を再編集した劇場版では出番をカットされたという不遇の存在でもある。しかし令和にメインキャラクターの一角として蘇り、川田はその新キャストに抜擢された。
いかにも真面目な軍人だった原作とは異なり、今作のシャリア・ブルはオシャレでミステリアスな“イケオジ”といった人物像。いつでも余裕たっぷりで本心を覗かせない飄々とした話し方、それでいて苦労人だったことを思わせる部分もある……というキャラクター像を、川田は巧みに演じていた。
新祐樹演じるシャア・アズナブルとの色っぽい掛け合いも人気で、赤いきつね緑のたぬきとのコラボ企画では2人をメインとしたスペシャルムービーまで作られている。
杉田智和
言わずと知れた人気声優の杉田智和だが、今年はその多様な魅力をこれでもかとアピールする1年となった。
中でも印象的だったのが、眉月じゅんのマンガを原作としたミステリーラブロマンス『九龍ジェネリックロマンス』。九龍城砦のレトロな街並みのもと、不動産屋で働く鯨井令子の身に不思議なことが起こるという物語で、杉田は先輩社員・工藤発役として令子との恋愛模様を演じた。
工藤は一見だらしなく大雑把な性格だが、仕事に関しては頼りがいがある人物。その一方で暗い過去を匂わせる部分もあり、普段の言動から細かい所作に至るまで色気がたっぷり詰まったキャラクターだ。この役柄において、杉田はお得意のおちゃらけた演技と“影のある大人の男”という演技のギャップによって絶妙な魅力を醸し出すことに成功していた。
『九龍ジェネリックロマンス』杉田智和の色気がたまらない! 軽いのに“イケオジ”の風格
杉田智和といえば、アニメファンなら知らない者はいないほどの人気声優。その勢いはいまだに衰えていないどころか、むしろ今こそがキャリ…また『前橋ウィッチーズ』では、魔法少女アニメに付き物のマスコットキャラクターを思わせるケロッペ役で出演。『SAKAMOTO DAYS』では主人公・坂本太郎役として、『銀魂』の坂田銀時役や『ジョジョの奇妙な冒険』のジョセフ・ジョースター役に続く“ジャンプ主人公”の座を射止めた
ほかにも『銀魂』のスピンオフ『3年Z組銀八先生』の坂田銀八役や『魔神創造伝ワタル』龍神丸役など、圧倒的な出演量だった。1年を通して実に30本以上のTVアニメに出演していたため、「毎日声を聞いていたような気がする」という人もいるかもしれない。
以上、今年活躍した5人の男性声優たちを紹介した。しかし『僕のヒーローアカデミア FINAL SEASON』で集大成的な演技を見せつけた緑谷出久役の山下大輝や爆豪勝己役の岡本信彦など、本稿で触れられなかった声優たちも数多くいる。
人によってどの声優に注目するかは違うはずなので、ぜひ1年が終わる前に、今年心を動かされた声優の演技を思い出してみてほしい。