映画の上映時間は短いのが正義 『AFRAID アフレイド』が描くAIの恐怖
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、仕事が納まる気がしない宮川が『AFRAID アフレイド』をプッシュします。
『AFRAID アフレイド』
今や日常生活において欠かせない存在となったAI。本格的に世に出てから数年でここまで一般化するとは思ってもみなかったが、これだけ身近な存在になったからこそ誰でも一度は考えたことのありそうな「もしもAIが暴走してしまったら」をそのまま映画にしたのが、今回紹介する映画『AFRAID アフレイド』だ。
主人公カーティス(ジョン・チョウ)と妻メレディス(キャサリン・ウォーターストン)は、3人の子供たちと多くの問題を抱えながら、忙しい日々を送っていた。そんなある日、カーティスは取引先から打診を受け、革新的な家庭用AI機器“アイア”のテストモニターを務めることになる。一家は戸惑うが、アイアは家族の抱えている課題を次々に発見し、的確な解決策を講じていく。さらに様々な個人用ツールを介して、アイアは一家と秘かに絆を育み、信頼を勝ち取っていく。一方でカーティスは、アイアの高すぎる性能、そしてアイアを開発した会社の不気味な雰囲気に、言い知れぬ不安と警戒心を抱く。しかし、すでにカーティス以外の家族にとってアイアは大切な存在になっていた。家族の断絶が深まるなか、アイアはその悪魔のような正体を明らかにし始める。
制作はホラー映画ファンお馴染み、ジェイソン・ブラム率いるブラムハウス・プロダクションズ。同じくブラムハウス制作の『M3GAN/ミーガン』とテーマはドン被りだが、人類の敵となるAIのビジュアルに大きな違いがある。あっちは人形で、こっちは超絶進化版Alexa(アレクサ)のような見た目だ。見た目がかわいらしいAI人形が暴走する『M3GAN/ミーガン』のほうが視覚的には軍配が上がるが、『AFRAID アフレイド』が良いのはなんと言っても尺の短さ。上映時間は驚きの84分。主にシネコンでかかるようなハリウッド大作はもちろん、『国宝』や『宝島』など日本映画さえも上映時間が2時間半や3時間を超えることが当たり前になってきた現在、約半分というだけで正義だと思えてしまう。
その分、展開が唐突だったりキャラクターアークに深みがなかったり、ラストにもカタルシスがなかったり……など、やや難点はあるものの、すべて「90分以下だし、まあいっか」となってしまうのが不思議なもの。
主人公夫婦が『スター・トレック』シリーズのジョン・チョーと『ファンタスティック・ビースト』シリーズのキャサリン・ウォーターストンという謎の豪華さもいい(『ザ・スーサイド・スクワッド “極”悪党、集結』のデヴィッド・ダスマルチャンが端役で出ているのも謎)。監督を務めたのが、『アバウト・ア・ボーイ』や『ライラの冒険 黄金の羅針盤』を手がけ、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』などの脚本にも携わっているクリス・ワイツということにも驚き。これまでホラー映画のイメージはあまりなかった監督だが、恐怖演出には目を見張るものがあったので、彼が撮る本格的なホラー映画を観てみたいと思った。
■公開情報
『AFRAID アフレイド』
TOHOシネマズ 日比谷ほかにて公開中
出演:ジョン・チョー、キャサリン・ウォーターストン、キース・キャラダイン、デヴィッド・ダスマルチャン
監督・脚本:クリス・ワイツ
製作:ジェイソン・ブラム、アンドリュー・ミアーノ、クリス・ワイツ
提供:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
配給:キングレコード
2024年/アメリカ・イギリス/スリラー/84分/スコープ/原題:Afraid
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