北村匠海、松村北斗、竹内涼真、妻夫木聡らが刻んだ名演 2025年に活躍した男性俳優たち
毎年この時期になると、1年間を振り返ってみて、特別に印象に残った俳優たちについて原稿を書いている。今年もその機会がめぐってきた。2025年もまた、何人もの俳優たちの業に酔いしれたもの。ここでは、映画、ドラマ、演劇作品に名演を刻んだ10名の男性俳優について言葉をしたためてみたい。
まずはこの人、北村匠海である。朝ドラ『あんぱん』(NHK総合)で俳優としての自身の立ち位置をより強固なものとした彼は、映画『悪い夏』で“闇堕ち”する公務員を好演。前者で演じたのが漫画家のやなせたかしをモデルとした好人物であり、しかもこの両作が世に出たのがほとんど同時期だったことから、北村の演技の振れ幅の大きさ、ポテンシャルの高さを多くの人々が再認識したことだろう。続く『金子差入店』での猟奇的な殺人犯役、現代社会の暗部に足を絡め取られる青年に扮した『愚か者の身分』での演技も光っていた。そのうえ、『世界征服やめた』で監督デビュー。紛れもなく、今年のエンターテインメントシーンの中心人物のひとりである。
北村匠海が出演作ごとに大きな進化 『あんぱん』で見事に立ち上げた“やなせたかし”像
放送中の「朝ドラ」こと連続テレビ小説『あんぱん』(NHK総合)は、いよいよ佳境へ。これは『アンパンマン』の生みの親となった夫婦を…そんな北村と並んで『愚か者の身分』に名演を刻んだ林裕太も、確実にここで言及しなければならない俳優のひとりだ。俳優デビューからまだ5年の“最若手”ではあるが、その多岐にわたる出演作の数々から、彼がどれだけ厚い信頼を獲得している俳優なのか分かるだろう。『愚か者の身分』で彼のことを知った方も多く、この演技者の誕生を誰もが心から喜んでいるようである。演じることに対する真摯な姿勢は、先輩俳優らとともに釜山国際映画祭にて「最優秀俳優賞」を受賞することに結実した。エンタメ界の“これから”をつくっていく才能だ。
映画のフィールドに絞って見てみると、黒崎煌代、松村北斗、岩田剛典も素晴らしかった。黒崎は初主演映画『見はらし世代』がカンヌ国際映画祭でのワールドプレミアを経て日本でも封切りとなり、大きな話題に。多方面から熱く支持された『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』では助演俳優として、作品の底上げに貢献した。彼もまた、“これから”をつくっていく才能である。松村に関しては、今年も安定していたというべきだろう。作品の顔となった『ファーストキス 1ST KISS』も『秒速5センチメートル』も大ヒット。いずれも2025年を代表する作品だ。得難い演技者なだけに、これまで以上にチャレンジングな作品での姿も見てみたいものである。いっぽう、“意外性”を感じさせたのが岩田だ。主演映画『金髪』ではダサくてイタい中学教師に扮し、大胆なパフォーマンスで俳優としての新境地を開いた。彼はまだいくつもの引き出しを持っている。