『ミルキー☆サブウェイ』『アポカリプスホテル』 2025年ダークホース的傑作アニメを総括

 2025年もいろいろなアニメがヒットを記録したが、そのなかには「まさかここまで話題になるとは思わなかった」と視聴者を驚かせた作品も少なくない。本稿で紹介したいのは、そんな“ダークホース”枠のアニメたちだ。作品の概要とあわせて、なぜ人気が出たのかという理由まで紹介していきたい。

2025年冬クール 『メダリスト』

TVアニメ『メダリスト』第2期PV第2弾|ED主題歌:Conton Candy「Rookies」

 まずは1月から3月にかけて放送された冬クールのアニメでは、『メダリスト』がダークホース枠と言えるだろう。同作はつるまいかだが『月刊アフタヌーン』で連載しているフィギュアスケートマンガを原作とした作品で、令和の世には珍しい“スポ根”的な熱さで話題を呼んだ。

 元々原作はアニメ化以前から「次にくるマンガ大賞2022」コミックス部門1位や「第68回小学館漫画賞」一般部門を獲得するなど、マンガ好きのあいだでは高く評価されていた。とはいえ小学生の少女たちがメインということで、「キャラクターのかわいさを売りにしたアニメなのでは?」という先入観を持っていた人もしばしば見られた印象だ。

 しかしいざ放送が始まると、“自分にはフィギュアスケートしかない”という絶望を抱えた主人公・結束いのりがコーチとなる明浦路司に出会い、人生を賭けた闘いに飛び込んでいく姿に心を打たれる視聴者が続出。王道でド直球な熱いストーリーが口コミで絶賛されるようになり、放送のたびにX(旧Twitter)のトレンド入りを果たすほどの盛り上がりを見せた。

 先日ドワンゴとピクシブが発表した「ネット流行語100 2025」では作中のセリフ「見なよ…オレの司を…」が第7位にランクインしたが、原作から推していたファンは、まさに「見なよ…オレのメダリストを…」という心境だったのではないだろうか。

2025年春クール 『アポカリプスホテル』『前橋ウィッチーズ』

『アポカリプスホテル』は2025年春アニメの“隠れた名作”だ 人類なき“日常”はハートフル

「シャンプーハット」から始まる物語  2025年春はハイクオリティなオリジナルアニメが揃ったシーズンとなった。『機動戦士Gun…

 『ウマ娘 シンデレラグレイ』や『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』が前評判通りの人気を見せた2025年春クールにも、負けじと人気をじわ伸びさせたダークホースアニメが存在した。キャラクター原案を漫画家・竹本泉が務めた『アポカリプスホテル』だ。

 同作は人類がいなくなった後の地球を舞台として、ホテリエロボットのヤチヨと従業員ロボットたちがホテル「銀河楼」で地球外生命体のおもてなしを行っていくという設定。独特の世界観とブラックコメディ風のセリフなどによって、知る人ぞ知る良作として評価された。

2025年春アニメ最大の話題作『前橋ウィッチーズ』 なぜ“魔女見習い”をやめようとしたのか

「魔法」は人を救わない——魔(法少)女たちの「日常系」  TVアニメ『前橋ウィッチーズ』は、魔女になることを目指す(目指し…

 また同クールでは、サンライズ制作の魔法少女アイドルアニメ『前橋ウィッチーズ』もダークホース枠と言える。群馬県前橋市を舞台にしたご当地アニメで、5人の少女たちが“魔女見習い”になるというストーリーだが、かわいらしいキャラの見た目にかかわらず社会派なテーマやリアルな心の悩みに切り込む意欲作だった。

 とくに印象的なのは、シリーズ構成・脚本を手掛けた吉田恵里香の手腕だ。吉田といえば『ぼっち・ざ・ろっく!』などの萌え系のアニメから『虎に翼』といった社会的テーマのドラマまで、幅広い作風を持つ脚本家だが、同作ではその振れ幅を上手く活用。「一見テンプレのようなアニメキャラがリアルな身体で現実を生きる」という作劇上の魔法を成立させていた。

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