『ばけばけ』トキ×ヘブンの進展が微笑ましい 銀二郎&イライザ登場で揺れる松江

 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』第13週「サンポ、シマショウカ。」が幕を開けた。年内ラストの週にして、銀二郎(寛一郎)とイライザ(シャーロット・ケイト・フォックス)が松江に降り立ち、物語は過去一の盛り上がりを見せる。

 お祓いを受けた寺で聞いた怪談に心を打たれて以降、夜な夜なトキ(髙石あかり)が語る怪談に酔いしれるようになったヘブン(トミー・バストウ)。トキは誰かと好きなものを共有できる喜びに胸を躍らせながらも、怪談を語れば語るほど、ヘブンが帰国する日が近づく気がしてジレンマを感じていた。

 そんな中で届いたのが、元夫・銀二郎からの手紙。そこには、4月の最初の土曜日に松江へ行くから、トキに会いたいと書いてあった。銀二郎と会うのは、東京で別れてから実に4年ぶりだ。

 2人は価値観のすれ違いがあっただけで、お互いを嫌いになって別れたわけではない。「もしやよりを戻そうってことなんだないのか?」という司之介(岡部たかし)の言葉に、一瞬ほころんだトキの表情がまだ僅かに残っていた銀二郎への未練を物語っていた。

 一方で、トキの頭に浮かぶのはヘブンの顔。銀二郎に会うならば、ヘブンに休みをもらわなくてはならない。トキとヘブンは怪談「小豆とぎ橋」の聖地巡礼に出かける。物語になぞらえて、謡曲「杜若(かきつばた)」を謡いながら、恐る恐る舞台となった橋を渡る2人。

 そのとき、木に激突して驚いたヘブンがトキに抱きつくかたちに。トキは体を硬直させ、ヘブンは慌てて離れる。付き合う一歩手前の中学生のような初々しいやりとりに、すっかり忘れていた甘酸っぱい感情が蘇ってきた。

 おそらく本人たちは自覚していないが、2人が互いを異性として意識し始めているのは誰の目にも明らか。無自覚な気持ちが、絶妙な“間”となって会話の中に表れている。

 2人が立っているのは、小豆を洗う女の幽霊が出たとされる橋。小豆洗いから連想して銀二郎のことを思い出したトキが休暇を申し出ると、ヘブンは二つ返事でOKを出した。ところが、理由を聞かれたトキが答えを濁した途端、何かを察したように休みを保留にする。しかし、また別の日、一通の手紙を受け取ったヘブンは再びトキに「ヤスム、ドウゾ」と告げるのだ。

 ヘブンが手紙を隠すような仕草をしていたこともあり、気になって錦織(吉沢亮)のもとを訪ねたトキは送り主が写真の女性、イライザであることを知る。人は意識している相手の前でこそ、自分を取り繕ってしまうもの。そして、同時に相手の一挙一動に敏感になり、気持ちを左右されてしまう。トキとヘブンはお互いを意識しているがゆえに、別の異性の存在を匂わせなくないのに、嗅ぎ合ってしまうのだろう。

 トキは銀二郎、ヘブンはイライザに会えることを素直に喜べない時点でもう答えは明白のように思えるが、実際に再会したら思いが再燃する可能性もある。いずれにせよ、銀二郎とイライザの来訪は、いまはまだ女中と雇い主のまま燻っているトキとヘブンの関係に一石を投じるに違いない。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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