『良いこと悪いこと』ターボー=犯人説を総括 森本慎太郎が表現する“得体の知れなさ”

ターボーのどっちつかずな態度を成立させる森本慎太郎

 しかし、ガラス落下事件以降、ターボーは事業そっちのけで事件解明に向けて一番積極的に動いているようにも見える。真犯人ではないと思わせる決定的なシーンが、羽立太輔/ちょんまげ(森優作)の家に潜入して、ガラケーの動画から7人目の森を探し出したこと。もし森とグルになって犯行を行っているのなら、ちょんまげが隠し持っていた動画を消して証拠隠滅するはずだし、1人のときに動画を見つけてあそこまでリアクションをとらないだろう。最近の行動は事件解決に向けて純粋な正義として動いているようにしか見えず、穿った見方をするなら、小学校時代にキングと絶交して疎遠になった仲間たちと当時を取り戻すかの如く事件に挑んでいるこの状況をプレイとして楽しんでいると言え、本気で事件解決をしたいのならCEOとしての大人のあらゆる力を使って追求していてもおかしくないのだが。もしターボーが黒幕だった場合はキングの夢であるヒーローにさせるための演出とも言えるが、今となってはその線も極めて低い。

 しかし、ターボーの存在を怪しく感じさせている最大の要因は、やはり演じている森本慎太郎の得体の知れない存在感に他ならない。『だが、情熱はある』(日本テレビ系)の山里亮太役や、映画『正体』での日雇い労働者役など、幅広い演技力というより役に憑依した演技を見せる役者として評価が高い役者だが、ターボー役としてもまさに憑依している。若手CEO特有のカリスマを感じさせるエネルギッシュな存在感と、知的さがゆえのセレブ反社なきな臭さ。一方で友達といるときはヤンチャな一面や情の厚さ。そして1人になったときに様々なものを抱えている裏の顔が全身から伝わってくる。その大人な感じがリアルだからこそ、リアルな人間ほど様々なものを抱え、何を秘めているのか分かりづらいもの。CEOとくれば尚更だ。それを踏まえての小学校時代の同級生が大人になって久々に会ったときに感じるあの雰囲気を森本は見事に醸し出している。その人物の背景を分かりやすく見せるのではなく、ブラックホールのような得体の知れない懐の深い演技を森本がこなしているからこそ、ターボーの本性が読みにくく、良い子なのか悪い子なのか、様々な可能性を想像させ今作を面白くしているのは間違いない。

 次回予告でターボーへの「さっさと殺されてください」の言い方は園子がターボーのスタンドプレーを戒めるような言葉にも聞こえるが、果たして殺されてしまうのか、それともみんなを宇宙に連れていく約束に向かっていくのだろうか。いずれにせよ、ターボーは未だ信用はできない。

良いこと悪いこと

ガクカワサキが脚本を手がけるノンストップ考察ミステリー。小学校の同窓会で、連続不審死が発生。同級生全員が容疑者となる中、犯人を巡る探り合いが始まる。

■放送情報
『良いこと悪いこと』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00~放送
出演:間宮祥太朗、新木優子、森本慎太郎(SixTONES)、深川麻衣、戸塚純貴、剛力彩芽、木村昴、藤間爽子、工藤阿須加、松井玲奈、稲葉友、森優作、水川かたまり(空気階段)ほか
脚本:ガクカワサキ
演出:狩山俊輔、滝本憲吾、長野晋也
プロデューサー:鈴木将大、妙円園洋輝
チーフプロデューサー:道坂忠久
音楽:Jun Futamata
制作協力:ダブ
©日本テレビ
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