『ばけばけ』髙石あかりも太鼓判を押していた下川恭平 “あっけない恋愛劇”制作秘話

 髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。

 第10週では、松江中学の学生・小谷(下川恭平)が、トキ(髙石あかり)の“顔”に惹かれて積極的にアプローチ。そんな2人の様子をヘブン(トミー・バストウ)がどことなく気に掛けるなど、くすぐったい恋模様が描かれた。

 小谷役の下川恭平は、映画『国宝』で立花喜久雄(黒川想矢)の親友・早川徳次役を演じて注目を集めた21歳。3歳から劇団に所属し、中学時代に北海道から上京して俳優活動を続けてきた。

 『ばけばけ』への出演は、同じく学生役の杉田雷麟、日高由起刀とともに応募者287人の中からオーディションで決定。制作統括の橋爪國臣は「撮影が始まってからだったので厳選したメンバーでの選考になりましたが、その中でも非常によかったです」と下川の表現力を評価する。

「本当にお芝居がうまいんですよ。いろいろなことが器用にできる役者さんで、その器用さが小谷のキャラクターとマッチするのかなと思って起用しました」

 『国宝』では、本作で錦織役を演じる吉沢亮との共演シーンはなかった下川だが、トキ役の髙石とは台本のない全編即興の映画『ハッピーエンディングス』(2022年)で共演済み。

 オーディション前には髙石と連絡を取っていたそうで、橋爪は「髙石さんは『頑張れ』と応援していて、『絶対、小谷は下川くんに違いない』と思っていたみたいです。それほどピッタリだったんですよ。あまりにピッタリすぎて、我々も『本当に彼で面白くなるのか?』と考えたほど(笑)。とても素晴らしい役者さんです」と絶賛した。

 小谷はオリジナルに近いキャラクターだが、ハーンの教え子だった大谷繞石(正信)からヒントを得ており、「東京時代に若い大谷さんとセツさんがいい雰囲気に見えて、ハーンが嫉妬した、といったエピソードもあるので、そういったところを少し参考にしています」と説明する。

 ちなみに、小谷の年齢設定は17~18歳で、トキは5歳ほど年上のお姉さん。オーディション時には恋愛パートをオープンにはしておらず、下川がこの展開を知ったのは小谷役に決まってからだという。一方、髙石とは「早い段階で『きっとそんなことがあるだろう』という話をしていた」といい、「撮影を楽しみに待っていたと思います」と振り返った。

 第50話では、小谷がトキと怪談『松風』の舞台となっている清光院へ。ここは、トキがかつて傳(堤真一)、そして銀二郎(寛一郎)とともに訪れた場所で、今回で3度目の登場となる。

 その意図について、橋爪は「基本的に、3つの話がすべてつながっていると思っています。最初に傳さんと行って、傅の思いと重なる価値観を持つ銀二郎との対比。一方、もともと怪談が好きで夫になった銀二郎と、まったく興味がなくて一緒にならなかった小谷という対比。同じ場所だからこそ、そうした違いが見えてくるはずです」と語る。

 さらに、「松江にはたくさんの怪談が残っていますが、清光院の怪談はハーンさんが文章に残していないんです。セツさんと一緒に行ったかどうかの記録も残っていない、数少ない場所です。なので、トキにとって“ヘブンとは行かないけれど、他のみんなとは行く場所”になるのがいいかなと、そういったことも考えながらあの場所を選びました」と話した。

 初めて2人きりで出かけることになったトキと小谷だが、怪談愛を語ったトキが「ごめんなさい!」と一方的にフラれるまさかの展開に。橋爪は「もちろん我々でプロットを作りましたが、勘違いで別れるような、ジメッとならない感じがふじき(みつ彦)さんらしくて面白いなと思っています」と手応えを明かす。

「現場では『小谷、ひどいやつだな』と下川くんはイジられたりもしていましたが(笑)、本当に気持ちがいいロケ地なんですよ。山に囲まれていて携帯電話の電波もまったく入らないですし、駐車場から10分くらい山道を歩かなければいけない。そこでみんなが自由にワイワイしながら、楽しく撮影していました」

 あっけなく幕を閉じた小谷との恋愛劇だが、第11週の予告ではヘブンに思いを寄せるリヨ(北香那)がトキに宣戦布告。トキとヘブンが結ばれるまでには、まだまだ波乱がありそうだ。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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