板垣李光人×中村倫也が語る、“作品を残す”意義 「タンポポの綿毛を飛ばしている感覚」

 板垣李光人が主演を務め、中村倫也が相棒役で共演する映画『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』が、12月5日に公開される。太平洋戦争下の「ペリリュー島の戦い」を描く本作で、板垣は心優しい漫画家志望の主人公・田丸均役を、中村は田丸を支える頼れる相棒・吉敷佳助役を務めた。終戦80年という節目にこの物語を届ける意義、そして亡くなった仲間の勇姿を書き記す“功績係”という題材にちなみ、表現者として「作品を残すこと」をどう捉えているのかを聞いた。【インタビューの最後には、サイン入りチェキプレゼント企画あり】

映画『ペリリュー ー楽園のゲルニカー』#板垣李光人 さん×#中村倫也 さんからコメントが到着!✨🏝️

“残す”表現としてつないでいく重みを実感

(左から)板垣李光人、中村倫也

ーーお二人はこれまでもアニメ作品で声優を務めてこられましたが、その経験の中でも本作ならではだと感じた部分はどこにありましたか?

板垣李光人(以下、板垣):やはり、デフォルメされているのが一番の特徴だと思います。表情やシルエットが写実的に描かれていないことで、観客が受け取る情報量は一見すると少なくなる。ですが、その余白があるからこそ、こちら側に想像の余地が生まれるんです。彼らがどんな環境に置かれて、どんな思いで立っているのか。表情や仕草だけでは語りきれないものを、想像しながら補完していける。膨らませる余地があるというのは、ペリリュー島の戦いのように過酷で繊細な題材を描く上で、とても合致していると感じました。間口は広く、どの世代も受け取れる作品になっていて、深読みしようと思えばどこまでも考えられる。戦争という題材を扱うときに、このバランス感覚をアニメーションで実現していることは非常に意義があると思いますし、実写ではなくアニメーションで届けられることが純粋に嬉しいです。

中村倫也(以下、中村):アニメ化されることで、この島の光景がより、“ありありと”立ち上がってくるのが特徴的だなと思いました。もともと“楽園”と呼ばれた南国の美しい島が、戦争によってどう悲劇へと変わっていくのか。その落差が映像としてとても鮮烈に感じられるんです。そして何より、音が持つ力がすごく大きい。戦闘機の唸り、砲弾が近づいてくる気配、弾が横をかすめる音、火炎の爆ぜる音、雨が降りしきる音……。そうした一つひとつが重なって、ペリリュー島という場所の息づかいを観客のすぐ近くに引き寄せてくれる。漫画とはまた違った形で、劇場という空間で体感したときにこそ生まれる“強さ”があると思いますし、それがどんな緊張感や迫力につながっていくのか、僕自身も楽しみにしています。

ーー本作のオファーを受けた理由、そして“終戦80年”という節目にこの物語を届けることの意義をどのように感じたかを教えてください。

板垣:時代が進めば進むほど、戦争というものに対する認識や、そこから学ぶ質や量はどうしても減っていってしまうものだと考えています。僕と中村さんの世代差の中でも、学んできた内容や触れ方にはきっと違いがありますし、それは今後もっと顕著になっていくと思います。僕自身、教科書の中の出来事という認識がどうしても強くあって、今回お話をいただいて初めて“ペリリュー島でこうした戦いがあった”という事実を知りました。ただ知るだけじゃなくて、作品として表現し、世の中に届けるというところまで関わることになる。自分が新しく知ったことを、そのまま「知る側」から「伝える側」へつないでいく一人になる。今回この作品を経て、“残す”表現としてつないでいくということの重みを、改めて強く実感しました。

板垣李光人

中村:ここ数年、作品を受ける際は「今、この映画を世に送り出すとしたら、どんな言葉を添えられるか」をすごく大事にしていて。宣伝活動も含めて、作品に添える“メッセージカード”みたいなものです。それが自分の中で明確であるかどうかが、選ぶ基準になっています。その点今作は、終戦80年という節目に戦争を扱う物語で、しかも内容に強度があり、嘘くささがまったくない。「言葉がいらないほど関わる意義が明確」だと思えました。実はオファーを受けたその日に、僕の出演情報へのコメントを書いていました。別にその日中に書かなければいけないというわけではありませんでしたが、それくらい「この作品に関わるなら、世の中へ何を発信するべきか」が最初からクリアに見えていたんです。そこまで明確に目的を持てたのは、今回が初めてでした。

中村倫也

ーーその時点で、板垣さんと共演されることはすでにご存知だったのでしょうか?

中村:もちろん知っていました。そしてすごく楽しみでした。お会いしたことはなかったんですが、どんぎつねのCMでよく拝見していて(笑)。それに、声優として共演するのはまた少し違う感覚があって、もうひとつ絆が深まるような感じがするんです。だからこそ本作で初共演できるのが楽しみでした。

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