『フェイクマミー』田中みな実の“本領”発揮か 薫の“盾”になりつつある竜馬も
親は子どものために頑張り、子どもは親の恩恵に報いようとする。だが、親からのプレッシャーで子どもが潰れてしまうこともある。『フェイクマミー』(TBS系)第6話は、親子の適切な距離感について考えさせられるエピソードだった。
ニセママ業を休み、母・聖子(筒井真理子)の転倒による検査入院に付き添うことになった薫(波瑠)。そこで聖子から1年前にガンの手術を受けたことを打ち明けられる。これまで黙っていたのは仕事が忙しい娘に負担はかけたくないという母なりの気遣いだった。
未だ自分が三ツ橋商事で頑張っていると思い込んでいる聖子に対して嘘をつき続ける罪悪感に耐えきれなくなった薫は、思い切って本当のことを打ち明ける。だが、バレたら刑罰に問われかねないニセママ業に聖子は強い拒絶を示す。「そんなことのために苦労して育てたわけじゃない」という言葉に潜む、ほんのりとした毒に思わず面を食らった。
薫が東大に入れたのは本人の努力によるものだが、聖子の支えも大きい。茉海恵(川栄李奈)の会社の新商品「ごほう美アイス」は、塾の帰りにいつも聖子が薫にアイスを買ってくれたというエピソードがヒントになって生まれたもの。そこには確かな愛情があり、だからこそ薫は聖子の期待に応えようとしてきたのだろう。
しかし、子育てをしながら働くことを理想とする聖子は、東大を卒業して一流の会社に入り、優秀社員賞まで受けた薫を誇りに思っているが、独身で子供がいない部分に引っかかりを感じていた。母は完全には自分を認めていない。その寂しさを抱えていた薫は、多様性という名の下に子育てで時短勤務中の同僚のサポートに回されて、いよいよ自分が否定された気持ちになったのではないか。
そんなときに舞い込んできたニセママの依頼。これまで培ってきたキャリアが活かせると同時に、子育てと仕事の両立という聖子の理想にも適っている。法律やルールに照らせば、間違っていることだとわかっていても、飛びつかずにはいられなかった。でも、一番応援してほしかった母に全否定され、心がズタボロになった薫を優しく抱き寄せるのは竜馬(向井康二)だ。正義感が強く、いつも自分が盾になって誰かを守ってきた一方で、弱さも持ち合わせている薫の盾に竜馬はなっていくのかもしれない。
かたや、茉海恵はいろは(池村碧彩)とスーパーで買い出し中に智也(中村蒼)と遭遇。自宅で特売品を分け合っていたところ、茉海恵の母・ミツコ(島崎和歌子)が突然押しかけてくる。いろはの入学祝いの鯛を持ってきたミツコは帰ろうとする智也を無理やり引き止め、手料理を振る舞った。まさにこの親にして、この子あり。ミツコと茉海恵は豪快で遠慮のない性格はもちろんのこと、子どもに対する距離感も似ている。
漁師の妻であるミツコは毎日大変ながらも幸せを感じているが、その生き方を茉海恵に強要はしない。自分とは違う人生を歩んでいる茉海恵を否定するどころか、「茉海恵には茉海恵の海がある。あんたが違う景色を見てるのが私は嬉しい」と理解を示すミツコ。でも決してほったらかしではなく、茉海恵をゆっくり寝かせるために、朝食を用意した上でそっと家を出るところに特大の愛情を感じた。
慎吾(笠松将)が「いろはちゃんって俺の子だよね」と訪ねてきたとき、茉海恵は怯えているように見えた。茉海恵は基本的に強気だが、狡猾に相手の恐怖心を煽る慎吾には逆らえない時期もあったのかもしれない。だが、最終的に逃げる選択ができたのは自尊心があるからであり、それはミツコの愛情に育てられたもの。またミツコがそうしてくれたように、茉海恵も自分とは異なる道を進もうとするいろはを心から応援することができる。
親は多かれ少なかれ、子どもに対して何らかの期待を寄せるもの。でも、子どもは親とは異なる人格を持ったひとりの人間だ。だから、子どもが親の思い通りにならないことも当然ある。そのとき、親がどういう行動に出るかで子どもの可能性の幅は大きく変わるのではないだろうか。茉海恵から好きなことを学ぶ機会を与えられつつも、過度な干渉を受けないいろははぐんぐんとその才能を伸ばしている。
一方、常に慎吾からの強い圧を感じながら勉強と向き合っている圭吾(高橋龍之介)は成績が伸び悩んでいた。慎吾はそんな圭吾をロンドンの学校に留学させようとするが、ジーニアス留学制度で選ばれるために努力する息子の意思を尊重したいさゆり(田中みな実)は、いろはを学校まで送りにきた茉海恵に相談を持ちかける。慎吾の性格を誰よりも知っている茉海恵は、さゆりの力になってあげたかったのだろう。茉海恵からのアドバイスのおかげで、慎吾に圭吾をこのまま柳和学園で学ばせ続けることを認めてもらうことができたさゆり。薫の妹・谷川麻衣子を名乗る茉海恵に友情を抱くが、ある疑問が浮かぶ。
自身の父が経営する病院でさゆりは薫と遭遇していた。その際、看護師に「花村」の苗字で呼ばれた薫はとっさに「旧姓なんです」と誤魔化したのだ。“麻衣子“は独身なのに、「花村」でないのはおかしい。具体的すぎるアドバイスにも違和感を持ったさゆりが慎吾のスマホをチェックすると、茉海恵と付き合っていた頃のツーショット写真が保存されていた。
そこから、彼女がどういう結論を導き出したのかはわからない。だが、ニセママ業に復帰した薫からの挨拶をさゆりはスルーし、学校には「1年1組には偽りの母親がいる」という匿名の怪文書が届く。これまでひと癖もふた癖もある人物を妙演してきた田中みな実が、ただの控えめな母親で終わるはずがないと思っていた視聴者も多いはず。もしさゆりが、薫がいろはのニセママであることに気づいていたら圭吾のためにも必ず蹴落としにいくだろう。慎吾以上の脅威になる予感しかしない。
「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」第1回大賞作をドラマ化。正反対の人生を歩んできた2人の女性が、子どもの未来のために“母親のなりすまし”という禁断の契約を結ぶ。
■放送情報
金曜ドラマ『フェイクマミー』
TBS系にて、毎週金曜22:00〜22:54放送
出演:波瑠、川栄李奈、向井康二(Snow Man)、中村蒼、野呂佳代、池村碧彩、橋本マナミ、中田クルミ、 津田篤宏(ダイアン)、筒井真理子、利重剛、若林時英、宮尾俊太郎、朝井大智、筧美和子、浅川梨奈、笠松将、田中みな実
脚本:園村三
演出:ジョンウンヒ、嶋田広野、宮﨑萌加
主題歌:ちゃんみな「i love you」(NO LABEL MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
プロデュース:韓哲、中西真央、唯野友歩
©︎TBS
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