宇野維正の映画興行分析

『爆弾』好スタートも『チェンソーマン』に届かず これで東宝作品が20週連続1位

 11月第1週の動員ランキングは、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』が週末3日間で動員29万4000人、興収4億4100万円で7週連続1位。興収も前週比111%と、公開3週目に続いて公開7週目に入って再び前週を上回っていて、劇場版『名探偵コナン 隻眼の残像』『国宝』『劇場版「鬼滅の刃」無限城編 第一章 猗窩座再来』に続いて今年4作目の興収100億円超えの可能性も現実味を帯びてきた。公開から46日間の累計動員は521万6500人、累計興収は79億7500万円となっている。

 2位に初登場したのは、呉勝浩の同名小説を永井聡監督が実写化した『爆弾』。オープニング3日間の動員は27万1000人、興収は3億7100万円。祝日となった11月3日までの4日間の興収は5億2000万円と5億円超えを果たしていて、シリーズものでもなく、テレビドラマの映画化でもなく、特定の人気俳優の動員力に頼っているわけでもない作品としては、異例の好スタートを切った。

 『爆弾』が好スタートを切れた理由の一つとしては、昨年末から各メディアを騒がせたスキャンダル報道によって広告の放送枠がスカスカになっていた製作幹事のフジテレビが、公開の半年以上前からスポットを流し続けていたことによる作品認知度の高さもあるかもしれない。もっとも、同じように何ヶ月もスポットを流していた他の自社製作作品が押し並べてヒットしたわけではないので、やはりキャスティングを含む企画が優れていたというのが一番の理由なのだろうが。

 『爆弾』がここからどれだけ粘れるかは認知度や企画力だけでなく、実際に作品を観た観客の評判や口コミ次第ということになるが、その評判も極めて良好。近年、同じヒット作でもぐんぐん数字を伸ばしていくロングラン型と動員が最初の週末に偏った初期型にはっきり分かれる傾向が強まっているが、『爆弾』はロングラン型も狙えるのではないか。

 とはいえ、先週末の段階で遂に20週連続で東宝配給(共同配給含む)作品が1位。『爆弾』はワーナーのローカルプロダクション作品だが、そのワーナーも洋画の配給は来年から東宝の子会社である東和ピクチャーズに移行する(しかも営業は東宝に委託する予定だという)。そんな微妙なタイミングで、『爆弾』は一矢報いる寸前まで迫ったのだが……。ちなみに、前週に続いてこれで2週連続でトップ10に洋画作品はゼロ。今やそれも、すっかりお馴染みのランキングの状況となってしまった。

■公開情報
『爆弾』
全国公開中
出演:山田裕貴、伊藤沙莉、染谷将太、坂東龍汰、寛一郎、片岡千之助、中田青渚、加藤雅也、正名僕蔵、夏川結衣、渡部篤郎、佐藤二朗
原作:呉勝浩『爆弾』(講談社文庫)
監督:永井聡
脚本:八津弘幸 山浦雅大
主題歌:宮本浩次「I AM HERO」(UNIVERSAL SIGMA)
配給:ワーナー・ブラザース映画
©呉勝浩/講談社 ©2025映画『爆弾』製作委員会
公式サイト:bakudan-movie.jp
公式X(旧Twitter):@bakudan_movie
公式Instagram:@bakudan_movie

『今週の映画ランキング』(興行通信社):https://www.kogyotsushin.com/archives/weekend/

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