向井康二、『フェイクマミー』副社長役がハマる理由 クールさの裏側にある人間愛の奥行き

 波瑠と川栄李奈がW主演を務める金曜ドラマ『フェイクマミー』(TBS系)に出演している向井康二の演技が話題だ。ドラマが放送されるなり、SNSでは「骨格が優勝」「繊細な目の演技が上手」と称賛の声が相次いでいる。

 向井は、人気グループSnow Manのメンバー。YumYumのCM『タイで見つけた、しあわせ篇』では軽快な関西弁を披露しており、ひょうきんで明るいキャラクターがお茶の間でも人気だ。バラエティでは、意気揚々とした語り口調でトークを盛り上げるのも上手く、ムードメーカーとしても知られている。

 しかし本作では関西弁を封印し、ベンチャー企業「RAINBOWLAB」の副社長として奮闘する黒木竜馬をクールに演じている。普段はラフな印象の向井だが、小顔・高身長・整った骨格のせいもあってか、スーツ姿が実に映える。ハスキーな声も、トーンを抑えてクールな表情を浮かべた途端、色気に映るから不思議だ。

 向井康二は、タイで放送されていたドラマ『Dating Game~口説いてもいいですか、ボス!?~』でもクールな表情とスーツ姿でファンを魅了していたが、『フェイクマミー』ではその魅力にさらなる「奥行き」が生まれている。とくに「スーツ姿で、受験会場まで走る」場面は、足の長さと身のこなしの美しさが際立っていて、まるで映画のワンシーンのように美しく、思わず見惚れてしまった。

 物語が進むにつれて、竜馬の魅力は「クール」という一言では語りきれないことに気づかされる。ふとした瞬間におどけたり、本音が漏れたり……。気づけば、竜馬という人物がどんどん愛しくなり、自然と応援したくなっていた。本記事では、そんな多面的な要素を持つ黒木竜馬を向井康二がどう演じているのかについて深掘りしていく。

 物語は、茉海恵(川栄李奈)が娘・いろは(池村碧彩)の受験のために、転職に苦戦する東大卒の花村薫(波瑠)に「偽の母親になってほしい」と頼むところから始まる。竜馬はそのことが世間にバレると大問題になることから、内心は穏やかではない。

 それでも、茉海恵にお願いされると、眉をひそめながらも断れず、健気にその役割をこなそうとする。その様子が、健気でいじらしく、最初のうちは「薫にそんな言い方しなくても」と思っていたものの、気づけば「竜馬、頑張れ」と応援していた。

 第2話では、いろはの面接が始まった途端、竜馬は神妙な顔つきで「話をさせてください」と先生に断りを入れたのち、いろはの特性と状況について丁寧に伝えていく。けれども、面接が終わった途端、まるで人が変わったかのように、薫へ「もうこれ以上、巻き込まれるのはごめんだ」と突っぱねる。

 その直後、竜馬はいろはに目線を落とし、穏やかな笑みを浮かべながら「いろは、またね」と優しく声をかける。そのわずか数分のシーンの中で、子どもを思う父親のような眼差しと、薫に対して冷静に忠告を伝えるビジネスマンとしての顔を見事に演じ分けており、その凄さに思わず息を呑んだ。ほかの場面でも、いろはが登場すると竜馬の目元が柔らかくなる。普段はクールな彼だが、子どもには自然と優しさが滲み出るのだ。

 竜馬は、仕事のできるインテリ系副社長という肩書きを持ちながら、実は元ヤンキーというギャップを秘めている。第4話の予告では、緑色の髪をしてヤンキー座りをする黒木の姿が映し出され、その過去が垣間見える。

 人前ではプレゼンを流暢にこなし、理知的な印象を与える一方で、時には茉海恵に対してはこっそりと「そうっす」と小声で呟き、はにかむような笑みを見せるシーンも。感情が高ぶると「マジっすか!」と素の言葉をこぼしてしまうなど、ふとした瞬間に砕けた一面を見せる。その瞬間、竜馬の隠された素顔がチラリと覗く。

 その後も、竜馬は照れた表情を茉海恵にだけ見せる。他の人には常にキリっとした顔つきで接しているが、口元をギュっと結ぶ仕草からは、感情を抑えている様子が感じられる。そうした細やかな表情や動きのひとつひとつから、竜馬が茉海恵に対して忠誠心だけではなく「心を開いて、信頼している」ことが、静かに伝わってくる。

 竜馬は陽キャの「裏」とクールな「表」を使い分けているというよりも、根底にある「陽キャ」の温かさがあるからこそ、クールな「表」の様子に奥行きが生まれているのかもしれない。

 竜馬には、どんな状況でも目の前の人にまっすぐな眼差しを向け、誠実に向き合おうとする一面も。第3話では、大手企業・三橋の商品と「RAINBOWLAB」の虹汁が同時期に発売されることが決まり、茉海恵が「もう駄目……」と頭を抱えるシーンがある。

 そんな彼女に対して、竜馬は冷静に事実を受け止めながらも、希望を見失わずに「打開策はきっと見つかります」と伝え、寄り添う姿を見せる。けれども、その瞳はどこか不安げだ。本当は誰よりも動揺しているはずなのに、茉海恵を心配させまいとする思いやりが、その瞳に映っていた。

 「仕事ができる男」という役柄であれば、向井康二以外にも演じられる俳優はいるかもしれない。けれども、ひょうきんさ、人情味、心意気、諦めない精神……。それらを奥に秘めながら、大切な社長のために静かに尽くす「黒木竜馬」という人物を体現できるのは、現場で人を楽しませ、幅広い世代と関わるグループに所属する向井だからではないだろうか。竜馬の多面的な魅力が浮かび上がるたびに、「この役は、彼以外に考えられない」と確信した。

 向井康二の快進撃はドラマにとどまらない。10月31日からは、森崎ウィンとのW主演による日タイ共同制作映画『(LOVE SONG)』が公開される。東京とバンコクを舞台に、「未完成の曲」がふたりを結びつけるピュアなラブストーリー。予告編では、歌やギター、さらにはタイ語を披露するシーンもある。向井の演技の幅が、さらに広がることは間違いない。

金曜ドラマ『フェイクマミー』

「TBS NEXT WRITERS CHALLENGE」第1回大賞作をドラマ化。正反対の人生を歩んできた2人の女性が、子どもの未来のために“母親のなりすまし”という禁断の契約を結ぶ。

■放送情報
金曜ドラマ『フェイクマミー』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:波瑠、川栄李奈、向井康二(Snow Man)、中村蒼、野呂佳代、池村碧彩、橋本マナミ、中田クルミ、 津田篤宏(ダイアン)、筒井真理子、利重剛、若林時英、宮尾俊太郎、朝井大智、筧美和子、浅川梨奈、笠松将、田中みな実
脚本:園村三
演出:ジョンウンヒ、嶋田広野、宮﨑萌加
主題歌:ちゃんみな「i love you」(NO LABEL MUSIC / Sony Music Labels Inc.)
プロデュース:韓哲、中西真央、唯野友歩
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/fakemommy_tbs/
公式X(旧Twitter):@fake_mommy_tbs
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公式TikTok:@fake_mommy_tbs

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