『ばけばけ』は“結末の見えた恋”をなぜ描いた? 制作陣は「みんなが銀二郎さんのファン」

 髙石あかりがヒロインを務めるNHK連続テレビ小説『ばけばけ』が現在放送中。松江の没落士族の娘・小泉セツとラフカディオ・ハーン(小泉八雲)をモデルに、西洋化で急速に時代が移り変わっていく明治日本の中で埋もれていった人々を描く。「怪談」を愛し、外国人の夫と共に、何気ない日常の日々を歩んでいく夫婦の物語。

 第4週では、出奔した夫の銀二郎(寛一郎)を追いかけ、トキ(髙石あかり)が東京へ。松野家から離れて新婚生活のような毎日を過ごすも、第20話で2人は別れの道を選ぶことになる。とはいえ、オープニング映像では毎回トキと将来の夫・ヘブン(トミー・バストウ)の仲睦まじい姿が流れており、視聴者は銀二郎との別れを承知の上で2人のやり取りを見守ってきた。

 そんな“結末の見えた恋”を2週にわたり描いた挑戦について、制作統括の橋爪國臣はこう語る。

「性格の不一致で別れるということであれば、現代ドラマでやってもいいんです。でも、このドラマは“自分ではどうしようもないところで運命が変わっていくような人”を描くのがひとつのテーマでもあって、銀二郎はそれを象徴する登場人物。このエピソードは大切に描いていかなければいけないと思っていましたし、別れのシーンにも“時代の中で、2人はくっつくことができなかったんだ”という寂しさがあったのではないでしょうか」

 橋爪が以前から明かしてきた「銀二郎をただの当て馬にはしたくない」という思いを寛一郎とも共有し、トキとの関係性を丁寧に描写。その甲斐あって、銀二郎は視聴者はもちろん、スタッフからも愛されるキャラクターになっていった。

「現場のみんなが銀二郎さんのファンになっていて、『銀二郎さんとそのまま結婚していればいいのに』と思っていましたね。みんなが銀二郎さんの味方として日々、撮影していましたし、別れの際には『トキはなんてもったいないことをするんだ』と(笑)。私自身、『銀二郎さんとトキの幸せな未来もあったんだな』と、みなさんに思ってもらえたらいいなと思いながら作っていました」

 一方、銀二郎の人柄の良さが際立つほど、松野家が“ひどい家族”に見えてしまう、という難しさも。しかし橋爪は、そこにこそ描きたいテーマがあるという。

「松野家は、現代の価値観だとひどい人たちに見えます。でも彼らは江戸時代のままの気分で生きていて、他の選択肢があることすら知らない。これは、現代でも同じだと思うんです。一歩引いたところから見ると『なんて変なんだろう』と思うけれど、当人たちは大まじめに生きている。他人のことを簡単に『それなら、こうすればいい』『それは、こうなんだよ』と言うけれど、いざ自分がその中にいると、周りが見えなくなるものですよね。これは明治時代だけの話ではなく、今現在もそうなのではないかというところが、このドラマの本質だと思っています」

 第5週では、ついにヘブンが初登場。トキとどのように出会い、どんな未来を見出すのか。新たな展開も楽しみだ。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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