市原隼人が『もしがく』で放つ“色気”がたまらない トニー安藤は史上最高のハマり役に

 市原隼人の色気がたまらない。

 これはどのような作品においてもいえることだが、いまここで指しているのはもちろん、放送中のドラマ『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』(以下、『もしがく』/フジテレビ系)での市原に対してである。演じているのはトニー安藤というキャラクター。じつに謎めいた人物だ。彼の出番はかなりかぎられている。それでも、たまらない色気を放っているのだ。

 この『もしがく』とは、1984年の渋谷を舞台とした青春群像劇。三谷幸喜が脚本を手がけ、若手からベテランまでの多彩な顔ぶれによって、コメディタッチの“三谷ワールド”が繰り広げられているところだ。

10月水10『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』第4回10/22(水)60秒予告

 メインステージとなるのは、「八分坂」という架空の町にあるWS劇場。ここに主人公の久部三成(菅田将暉)がやってきたことから物語が動き出した。彼はWS劇場で働くこととなり、個性的な面々とともに劇場再建のために芝居を打とうとしている。上演する演目は、W・シェイクスピアの『夏の夜の夢』だ。妖精たちが登場するファンタスティックなこの作品は、「八分坂」の人々にピッタリ。トニー安藤が演じるのは、物語の中心人物であるライサンダーだ。

 三谷による脚本に、トニー安藤のことはどのように記されているのだろうか。番組公式サイトのキャラクター紹介のページには、“WS劇場の用心棒。こわもてで寡黙。”とだけ記されている。あまりにも情報が少ないが、だからといって彼はこれ以上の存在でもない。WS劇場の用心棒で、こわもてで、寡黙――そう、たしかにそのとおりだ。トニー安藤のキャラクターを端的に説明できているだろう。

 この説明どおり、トニー安藤は口数が少ない。彼のセリフはかなりかぎられたもの。しかしそれでも“用心棒”という肩書きと“こわもて”という特徴が、彼を非常に個性的な存在にしている。久部が言葉によって自身が何者であるのかを表明するのとは対極的で、彼は言葉そのもの以外の手法によって、自身がどのような存在なのかを表明する。セリフが極めて少ないにも関わらず、今回の“三谷ワールド”においては一際クセの強いキャラクターだといえるだろう。『もしがく』の世界を補強するような存在である。

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