『良いこと悪いこと』『シナントロープ』 “群像劇×ミステリー”がドラマのトレンド?

スピーディな展開が魅力の『良いこと悪いこと』

『良いこと悪いこと』©日本テレビ

 じわじわと不穏な非日常に取り込まれていく感覚を覚える『シナントロープ』に対して、考える暇を与えないほどのスピーディな展開が印象的だったのが『良いこと悪いこと』だ。

 22年前に埋めたタイムカプセルを掘り起こしたことが契機となり、小学6年生のときのクラスメイトたちが次々と事件に巻き込まれていくノンストップ考察ミステリーと銘打たれた本作では、なんと初回放送が始まって1分ほどで、主要キャラクターであった水川かたまり(空気階段)演じる武田敏生がマンションから突き落とされて殺されてしまう。

『良いこと悪いこと』©日本テレビ

 さらに、第1話のなかで立て続けに2人目の犠牲者まで生まれたことで、単なる犯人当ての考察ミステリーではなく、より風呂敷を広げて、多くの人々を巻き込む群像劇になる予感を漂わせている。第2話からは主人公である高木将(間宮祥太朗)と猿橋園子(新木優子)が、遺恨を残すバディとして事件の真相を探っていく展開になるだろうが、注目したいのはほかのキャラクターの動き。6年1組のクラスメイトはもちろん、高木の行きつけであるレトロスナック“イマクニ”や、園子が所属する『週刊アポロ』に関係する人物からの視点、彼らが知っている情報も物語の謎を解く手がかりになるだろう。

 両作品に共通している要素でいうと、“音楽”が大きなカギを握っていることだろうか。平成カルチャーが存分に詰め込まれた『良いこと悪いこと』では、主題歌に選ばれたポルノグラフィティの「アゲハ蝶」を筆頭に、世代に共通する懐かしさを持つ楽曲が多く登場する。『シナントロープ』の劇中でも、昔のバンドとして名前の挙がった「キノミとキノミ」やカラオケでキバタンが歌っていた椎茸Pの「ビイノアンバイ」など、ドラマオリジナルのアーティストをあえて複数登場させていることから、人と人を繋ぐ重要なヒントである可能性を秘めている。

 群像劇ミステリーの醍醐味と言えば、個性豊かなキャラクターの会話を楽しみながら、さまざまな人物の視点から多角的に事件を見つめられるところ。巨大なジグゾーパズルにピースを当てはめていくように、緻密に隠された伏線やちりばめられた謎をひとつの場所に集めていく。

 まだまだ物語は始まったばかりで全体像を掴みきれていない部分もあるが、裏を返せば、今はもっとも何が起こるかわからない段階。ぜひ、非日常な群像劇とミステリーのドキドキ感を味わってほしい。

ドラマプレミア23『シナントロープ』

此元和津也が原作・脚本を務めた男女8人の青春群像ミステリー。街の小さなバーガーショップで不可解な強盗事件が発生し、静かだった日常が少しずつ歪みはじめていく。

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