『ヤンヤン 夏の想い出』日本版予告の演出を岩井俊二が担当 「今もまったく色褪せない」

 12月19日に公開されるエドワード・ヤン監督作『ヤンヤン 夏の想い出』4Kレストア版から新場面写真と予告編が公開された。

 本作は、少年とその家族が経験するひと夏の出来事を、時に残酷で時にまばゆいほどの映像で描いた映画史に残る青春映画。台湾と日本合作で製作され、台北と東京、熱海を舞台とし、イッセー尾形ら日本の俳優陣も参加している。

 学生のヤンヤンは、コンピュータ会社を経営する父、そして母、姉、祖母と共に台北の高級マンションで幸せを絵に描いたような暮らしをしていた。だが母の弟の結婚式を境に、一家の歯車は狂いはじめる。祖母は脳卒中で入院。父は初恋の人にバッタリ再会して心揺らぎ、母は新興宗教に走る。そして父は、行き詰まった会社の経営を立て直すべく、天才的ゲーム・デザイナー大田と契約するため日本へと旅立つのだが……。

 本作は2000年に第53回カンヌ国際映画祭にて監督賞を受賞した他、東京国際映画祭、トロント国際映画祭等世界の映画祭にて上映され、2016年の英国BBC主催の「21世紀の偉大な映画ベスト100」の第8位に選出。2023年にはハリウッド・レポーターによる「21世紀の映画ベスト50」で1位に輝き、北米のレビューサイトRotten Tomatoesでは批評家からは97%フレッシュ、一般のユーザーからは91%という高スコアを維持(2025年8月27日時点)している。今回のレストア版は、第78回カンヌ国際映画祭カンヌクラシック部門のオープニング作品として上映された。

映画『ヤンヤン 夏の想い出』4Kレストア版予告編

 公開された予告編の演出を務めたのは、『スワロウテイル』『リリイ・シュシュのすべて』等で知られる映画監督・岩井俊二。2000年の公開時にも『ヤンヤン 夏の想い出』の予告を手掛けた彼が、25年を経て4Kレストア版でも新たに予告を演出した。

 この予告の公開にあわせて、「エドワードと初めて会ったのは1996年の台湾。(中略)僕にはいつも笑顔で、僕もエドワードを兄のように思っていた。まさか『ヤンヤン』が最後の作品になるとは思わなかった。歳月は過ぎたが、エドワードの作品は今もまったく色褪せない」と、エドワード・ヤンとの出会いと別れを述懐した。

 また、ヤンヤン、父、姉、母親たちのそれぞれの一瞬をとらえた新場面写真4点も公開された。加えて10月3日よりムビチケオンラインも発売。購入者には「2025年カンヌ国際映画祭ver.壁紙」が特典として用意されている。

岩井俊二

エドワードと初めて会ったのは1996年の台湾。三人の監督がお互いの国で映画を撮影するという企画Y2Kプロジェクト構想を聞いた。結局は僕だけ挫折して申し訳ないことをした。実現していたら『リリイ・シュシュのすべて』の舞台は台湾だったはずだ。結局エドワードも若干の日本ロケを入れつつも台湾を主たる舞台に作品を作った。それが『ヤンヤン』だった。2007年。突然の訃報が舞い込んだ。奇遇なことに葬儀のあったウエストウッドの墓地のすぐ近くにいて、参列することができた。現場では気難しい時もあると聞いていたが、僕にはいつも笑顔で、僕もエドワードを兄のように思っていた。まさか『ヤンヤン』が最後の作品になるとは思わなかった。歳月は過ぎたが、エドワードの作品は今もまったく色褪せない。

■公開情報
『ヤンヤン 夏の想い出』
12月19日(金)より、Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下、シネスイッチ銀座、109シネマズプレミアム新宿ほか全国公開
出演:ウー・ニエンジェン、エレン・ジン、イッセー尾形、ジョナサン・チャン、ケリー・リー
監督・脚本:エドワード・ヤン
プロデューサー:河井真也、附田斉子
アソシエイト・プロデューサー:ユー・ウェイエン、久保田修
撮影:ヤン・ウェイハン
照明:リー・ロンユー
編集:チェン・ポーウェン
録音:ドゥ・ドゥーツ
美術・音楽:ペン・カイリー
2000年/台湾・日本合作映画/173分
配給:ポニーキャニオン
©1+2 Seisaku Iinkai
公式サイト:https://yi-yi.jp

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