菅田将暉が大切にしている“媚びない姿勢”　三谷幸喜との再タッグで掴んだ手応え

菅田将暉が実感した、1980年代の能動的なエネルギー

ーー今は匿名のSNSで批評が飛び交う状況ですが、実名で発信する意義もあると思います。そうした背景のなかで、本作を現代に届ける意味をどのように感じていますか？

菅田：三谷さんも本読みのときに、「（80年代は）みんなエネルギーがあって能動的な時代だった」と説明していました。生き様が、見ていて気持ちがいいという感じですかね。久部は本当にダメで嫌われている役ですけど、今は全員に嫌われるみたいなこともできなかったりするんです。失敗もできないし、壁にぶち当たる前に「あと三歩歩いたら壁があるよ」と教えられる時代になりましたから。壁にもぶつかることすらできなくなってきていますし。ある程度自分が盲目的になって、夢に向かって進んでいく彼らの生き様みたいなのはすごく大事なことじゃないかなと思います。

ーー現代では、夢に向かってひたむきに突き進む姿を目にすることが少なくなってきました。

菅田： 仮に現代で久部がSNSやってたら 、大変なことになっていたと思います（笑）。あらゆるところで叩かれて、炎上して何にもせず終わると思います。ただ、久部みたいな奴は確かに厄介かもしれないけど、「あの時代には、こういう人たちがいっぱいいたんだな」と思いました。いろいろなエネルギーのある人がたくさんいることによって表現が生まれるし、生活が豊かになるという感じがすごくします。

ーー本作では「何者かになりたいけれど、なれない」ともがく若者像が描かれます。菅田さんご自身にも、周囲と比較したり誰かに憧れたりした時期はありましたか？

菅田：僕が初めて見た芸能人が神木隆之介で、中学2年のときにオーディションに行ったんです。本番中にトイレに行きたくなって抜けたら、そこで神木とすれ違って。まだ普通の中学生でしたが、同世代で第一線にいて華も実力もある姿を見て、「（自分には）無理かも」と思いました。

ーーどのようなきっかけで自分の道を切り開けたと感じていますか？

菅田：特別なきっかけというより、積み重ねかなと。自分はまだ何もやってなかったので「とりあえずやってみよう」と思っただけでした。その後『仮面ライダーW』（テレビ朝日系）をやらせてもらったり、恵まれた環境にいたから一生懸命やれたのが大きかった。振り返る間もなく、人と比べる余裕もなかったのも良かったです。あの頃はSNSも今ほど普及してなくて、情報が少ない分「次会うときまでに」と燃えられた。今は常に他の人の動きが見えて比べやすいから大変だろうなと思います。

芝居で大切にしている“客に媚びない”姿勢

ーー1984年というエネルギッシュな時代を描く本作は、現代の若者が抱える閉塞感とも対比されると思います。若い世代に向けて、この作品を通してどのようなメッセージを届けたいですか？

菅田：久部の物語は、演劇を通して名を馳せたいとか蜷川先生に認められたいといった欲望から始まりますが、最終的にどこにたどり着くのか。ぜひ放送を楽しみにしていただけたら嬉しいです。

ーー久部の「芝居への理念」と、ご自身のお芝居に対する考え方が重なる部分はありますか？

菅田：「客に媚びるな」ということですね。わかりやすく伝えようとしすぎず、観客を信じて表現に徹するべきだと。もちろん、わかりやすさをきちんと体現するのは難しく、それを経て初めて別の道が見えてくる。まず王道を軽んじるな、ということだと思います。久部が言うと説得力はないですけど（笑）。

■放送情報
『もしもこの世が舞台なら、楽屋はどこにあるのだろう』
フジテレビ系にて、10月1日（水）スタート 毎週水曜22:00～22:54放送
※初回30分拡大（22:00～23:24放送）
出演：菅田将暉、二階堂ふみ、神木隆之介、浜辺美波、戸塚純貴、アンミカ、秋元才加、野添義弘、長野里美、富田望生、西村瑞樹（バイきんぐ）、大水洋介（ラバーガール）、小澤雄太、福井夏、ひょうろく、松井慎也、佳久創、佐藤大空、野間口徹、シルビア・グラブ、菊地凛子、小池栄子、市原隼人、井上順、坂東彌十郎、小林薫ほか
脚本：三谷幸喜
主題歌：YOASOBI「劇上」（Echoes / Sony Music Entertainment (Japan) Inc.）
音楽：得田真裕
プロデュース：金城綾香、野田悠介
制作プロデュース：古郡真也
演出：西浦正記
制作著作：フジテレビ
©︎フジテレビ
公式サイト：https://www.fujitv.co.jp/moshi_gaku/
公式X（旧Twitter）：@moshi_gaku
公式Instagram：@moshi_gaku
公式TikTok：@moshi_gaku