『エイリアン:アース』訪れた“決別の瞬間” 登場人物それぞれの思惑が交錯する最終話へ

アーサーの死が子供たちにとって重要な理由

 虚ろな瞳で、横たわるアーサー(デヴィッド・リズダール)を見つめるスライトリー(アダーシュ・ゴーラヴ)の表情から始まる第7話。その横には彼が子供であることを強調するかのように、ホワイトタイガーのぬいぐるみが置いてある。そんな彼の元へスミー(ジョナサン・アジャイ)が駆けつけ、状況を理解しないままアーサーを浜辺に運ぶ手伝いをする羽目に。

 このシーズンを通して、最も精神的に追い詰められているのは間違いなくスライトリーだろう。モローから脅されたり、誤った倫理観を植え付けられたりした幼い彼は、モラルの指標もないまま嘘をつくようになってしまった。スミーも、まだマトモな嘘のつき方さえ知らない。そんな彼らを意識と記憶を取り戻したアーサーは責めることなく、子供を導く大人として極めて冷静に2人を宥めようとする。嘘は、つき始めたらずっとつかなければいけないこと。そんなこと、周りの大人は教えてくれなかった。アーサーは妻のデイム(エシー・デイヴィス)と違って、科学者でいることに誠実だった。それと同時に、シンセに子供の心を入れたことが、殺人と同意であることも理解している人物だった。ロスト・ボーイズの精神管理をしていたにもかかわらず、不安定になったら記憶を消してしまうデイムに対し、不安定で間違ったことをした彼らに、言葉で道徳を伝えようと努めたアーサー。そんな唯一の良心であり、良い大人がスライトリーとスミーの目の前で死んでしまった。

 もう何もかもが手遅れで、何もかもが悪い方向に向かってしまう。そう叫ぶスライトリーに、モローは決して優しい言葉もかけない。ウェンディやニブスと同じように、この2人もまたトラウマ的な体験を通して“大人”にならざるを得なくなってしまうのだ。

カヴァリエの切り札、カーシュの狙いとは何か

 ロスト・ボーイズがカヴァリエの洗脳から目覚めようとする最中、彼は自分がコントロールできそうな、新たな知的生命体に興味を示す。“目玉モンスター”ことT.オセルスだ。なるほど、ウェンディがゼノモーフを操るのに対し、何らかの因縁がありそうなT.オセルスをカヴァリエが操ろうとするわけだ。「化け物には化け物をぶつける!」そんな熱い戦いが期待できそうな一方、人間を宿主にしようと考えているカヴァリエ。一体誰が、その可哀想な人間として選ばれてしまうのだろうか。

 また、カヴァリエの腹心であるはずのカーシュが再びおかしな言動を起こしたことも見逃せない。フェイスハガーがついたアーサーを運ぶスライトリーとスミーに遭遇するカーシュ。しかし、彼はそのまま彼らを浜辺に行かせた。思い返せば彼は随分前からスライトリーとモローの通信を聴いている。つまり、モローを筆頭としたユタニによるネバーランド侵攻やゼノモーフの回収などを事前に知っていたのだ。知っていて、全てを起こさせた。その真意が気になるところであり、登場人物それぞれの思惑が交錯する最終話での展開はまるで予想もつかない。

■配信情報
『エイリアン:アース』
ディズニープラス スターにて独占配信中
出演:シドニー・チャンドラー、アレックス・ロウザー、ティモシー・オリファント、エッシー・デイヴィス、サミュエル・ブレンキン、バボー・シーセイ、デヴィッド・リズダール、エイドリアン・エドモンドソン、アダーシュ・ゴーラヴ、ジョナサン・アジャイ、イラーナ・ジェームズ、リリー・ニューマーク、ディエム・カミラ、モー・バーエル
クリエイター:ノア・ホーリー
製作総指揮:リドリー・スコット、デイビッド・ツッカー、ジョセフ・イベルティ、ダナ・ゴンザレス、クレイトン・クルーガー
©2025 FX Productions, LLC. Courtesy of FX Networks and Hulu

関連記事