『あんぱん』濱尾ノリタカが親子二役で問う戦争の傷跡 “ヤバ藤” 伊礼彼方も再び朝ドラに

 9月16日に放送された『あんぱん』(NHK総合)第122話では、なつかしい面影の人々が登場した。

 ミュージカル『怪傑アンパンマン』の制作に向けて動き出した嵩(北村匠海)とたくや(大森元貴)。多忙な嵩は打ち合わせに出席できず、代わりにのぶ(今田美桜)が作品のコンセプトを紹介する。『アンパンマン』に思い入れがあるのぶの解説には願望も込められていて、「アンパンマンはもっと遠くへ飛べるはず」と熱を込めて語った。

 なお、演出家のマノ・ゴローを演じるのは伊礼彼方である。伊礼は、『らんまん』(2023年度前期)で寿恵子(浜辺美波)にアプローチする実業家の高藤を演じており、2度目の朝ドラ出演となる。舞台に出演する俳優役には浜野謙太もいて、『怪傑アンパンマン』の上演に期待が高まる。

 ドラマ終盤でふたたびクローズアップされたのが、戦争が残した傷あとだ。蘭子(河合優実)が戦場体験者をインタビューした記事は好評で、蘭子は八木(妻夫木聡)と粕谷(田中俊介)に取材を申し込むが、八木は断る。そんなとき、嵩を見知らぬ男性が訪ねてくる。来訪者の名は田川和明(濱尾ノリタカ)。中国で戦死した岩男(濱尾ノリタカ)の息子だった。

 八木と嵩に向き直った和明。自分には息子がいるが、父の記憶がないため「父親としてどう接していいのかわからない」。名誉の戦死をしたと聞かされた岩男はなぜ死んだのか。生前の父の様子を知れば、きっと自分の中で得るものがあると考えたのだろう。

 沈黙を破ったのは八木だった。「君のお父さんの命を奪ったのは小さな少年だ」。にわかに信じられない様子の和明に、言葉を継ぐ八木。リン(渋谷そらじ)は、ゲリラの子どもで親を日本兵に殺された。殺したのは岩男で、岩男はリンをかわいがり、リンもよくなついていたが、最後にリンが両親のかたきを討った。第58話のシーンだ。

『あんぱん』“岩男”濱尾ノリタカの最期があまりにつらい 突きつけられる“逆転しない正義”

日本の敗戦が決定的になりつつある昭和20年(1945年)。補給路を断たれ、凄絶な空腹と戦うことになる嵩(北村匠海)の姿からは、週…

 和明はショックを受ける。リンをかばって死んだ岩男を、和明は受け入れることができない。「なぜ父は殺されなければならなかったんですか?」に対する嵩の答えは「それが戦争なんだよ」。答えになっていないけれど、それ以外に答えようがない。圧倒的な暴力と不条理に支配されるのが戦争だからだ。

 帰っていく和明をのぶは呼び止め、『あんぱんまん』の絵本を渡した。のぶは「何も助けになれないかもしれないけど」と言う。答えになっていないかもしれないけれど、自分の身を削っても誰かを助けるヒーローが、和明の心の傷を癒してくれると信じたい。

■放送情報
2025年度前期 NHK連続テレビ小説『あんぱん』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00〜8:15放送/毎週月曜〜金曜12:45〜13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜8:15〜9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30〜7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:今田美桜、北村匠海、江口のりこ、河合優実、原菜乃華、高橋文哉、眞栄田郷敦、大森元貴、戸田菜穂、戸田恵子、浅田美代子、吉田鋼太郎、妻夫木聡、阿部サダヲ、松嶋菜々子ほか
音楽:井筒昭雄
主題歌:RADWIMPS「賜物」
語り:林田理沙アナウンサー
制作統括:倉崎憲
プロデューサー:中村周祐、舩田遼介、川口俊介
演出:柳川強、橋爪紳一朗、野口雄大、佐原裕貴、尾崎達哉
写真提供=NHK

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