『奪い愛、真夏』は夏ドラマ史上最恐の衝撃作 『奪い愛、冬』から受け継がれたカオスな構造
一方で、物語の中心にいる真夏と時夢は、むしろ一番“普通”に見える存在だ。真夏は母を事故で亡くした心の痛みを抱えながら懸命に働き、時夢は会社を守るために愛のない結婚を選び、不妊という現実にも向き合っている。2人の恋は本来なら共感を呼ぶはずの純粋なものだが、周囲の人々が次々に突飛な行動を重ねていくことで、結果的に“翻弄される主人公”の立場に置かれてしまう。2人が普通であるからこそ、未来をはじめとする登場人物たちの振り切った行動が際立ち、視聴者はその対比の中で2人の悲劇性をより強く感じ取ることになるのだ。
物語が進むにつれて、次々と現実では考えられない出来事が加わっていく。真夏の母・三子(水野美紀)が実は生きていてストリップ小屋に現れるという驚きの展開や、時夢の時計にタイムリープの力が宿されていることが明らかになる場面など、その仕掛けは突拍子もないように見える。けれど、それらは単なる奇抜さではなく、登場人物の心の動きを映し出す装置として機能している。母の“再登場”は真夏が過去から解き放たれないことを象徴し、未来がタイムリープに挑む姿は、愛を取り戻すというよりも、自分の望む形に変えるためなら時間すらもねじ曲げようとする強い執念を表している。こうした非現実的なギミックが人物の内面を映すことで、物語のカオスは一層鮮明に立ち上がってくるのだ。
いよいよ迎える最終回では、未来が時夢の時計を使いタイムリープを試みることが予告されている。それは愛を守るための行為というよりも、過去を書き換えてでも自分の思い通りにしようとする、彼女の執念の表れだろう。愛を奪うことに突き動かされる姿が、物語の行き着く先を示しているように見える。果たしてその結末はどうなるのか。未来の行動は、誰も幸せにせず、むしろ登場人物たちを終わりのない混乱に閉じ込めてしまうのかもしれない。しかし、そうした皮肉な結末こそが、この作品に最も似つかわしいラストなのではないだろうか。
『奪い愛、真夏』は最後まで視聴者を振り回し、笑わせ、驚かせ、ときにぞっとさせる作品であり続けるだろう。最終回が描くのは、安易な救いではなく、愛という感情の不安定さや愚かしさを描くのかもしれない。けれども、そのどうしようもない混乱にこそ視聴者は引き込まれていく。夏の終わりに残るのは爽快さではなく、忘れられない余韻。『奪い愛、真夏』はその名のとおり、愛を奪い合う虚しさを強烈に刻み込み、2025年の夏ドラマを語る上で外せない作品となりそうだ。
さまざまな登場人物たちが愛を奪い合う“激しくも切ないドロキュン恋愛ドラマ”『奪い愛』シリーズの最新作。結婚までも約束した最愛の恋人と不倫の末に別れた主人公の恋模様を描く。
■放送情報
金曜ナイトドラマ『奪い愛、真夏』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15~24:15放送
出演:松本まりか、安田顕、高橋メアリージュン、森香澄、白濱亜嵐、石井正則、石山順征、谷原七音、水野美紀
脚本:鈴木おさむ
演出:樹下直美、上田迅
ゼネラルプロデューサー:横地郁英(テレビ朝日)
プロデューサー:川島誠史(テレビ朝日)、神通勉(MMJ)、小路美智子(MMJ)
音楽:沢田完
主題歌:安田レイ「BROKEN GLASS」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作:テレビ朝日、MMJ
©テレビ朝日
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