『ホットスポット』は何度見返しても発見がある メイキングで知る大がかりな仕掛けの数々

 また、第3話の温泉に忍び込むのに失敗し寒さに震える高橋の場面で、眼鏡の曇り具合や、吐く息1つで寒さの伝わり方が違うからと、計算して作っている現場のすごさを目の当たりにし「感動した」と語る支配人・奥田役の田中直樹や、“あやにゃん”こと綾乃(木南晴夏)の車を持ちあげる場面の「いい大人が協力し合って」作る「超アナログな撮り方」を見ていて「すごい幸せだなあ」と思ったと語る平岩紙など、本作の全篇に漂う多幸感とでも言うべきものは、そんな作り手の熱量が連鎖することで生まれたものなのだろう。また、水野格監督と幼なじみを演じる市川・鈴木・平岩の3人で決めたという「食べながら喋る」シーンの工夫もまた、本作の「日常感」を高める一因となっていると言える。

 メイキング映像を観て改めて感じたのは、作品の中心で常に堂々とそびえ立つ富士山の壮大さである。そしてそこから気づくことができるのは、「富士山」のある風景が日常の一部である清美たちの日常もまた、宇宙人や未来人や超能力者の日常と同じく、多くの視聴者にとっては非日常であるということだ。それまで台本のト書きに「富士山を一切見ない清美」と書かれていたのが、最終話で「富士山を見る」場面があり、改めて見つめると「すごい守られていたんだなあ」と思い、涙が出たとメインキング内のインタビューで市川実日子が語ったように。傍から見れば特別な、彼ら彼女たちの当たり前の日常は、脅かされてはじめてその本質を表す。

 最終話の終盤では、30年後の「レイクホテル浅ノ湖」が描かれた。従業員として変わらずフロント業務をしている高橋のもとに、おばあちゃんになった清美とはっち、みなぷーがやってくる。84歳でも見た目は変わらない高橋と、しっかり年齢を重ねた3人の姿を見ていると、変わらないやり取りをしているのにもかかわらず、どこか切なくなった。人間より寿命が長い宇宙人にとって「一緒に年をとれない」ことの寂しさを感じたからだ。でも切なさはそのまま、新たなフロントスタッフである富小路(三浦透子)との、かつて清美や由美(夏帆)としていたような「宇宙人の能力」を巡るやり取りで笑いに変わっていく。

 本作最後のショットが富士山のアップであることから「高橋さんの秘密も今では富士浅田市民の過半数が知っていると言っても過言ではない。ただ不思議とその情報が県境を越えたことは一度もない」ことが富士山の力であることがわかるように、彼らのちょっとだけ切なくて、でもどこまでも面白い日常は、富士山に守られてこれからも続いていくだろうことがわかるのだ。本作を観ると、普段暮らしている街の景色が、少しだけ特別に見えるに違いない。

『ホットスポット』コメント&特典映像含むPR公開!【Blu-ray&DVD 9.10 発売】

■リリース情報
『ホットスポット』
Blu-ray&DVD BOX発売中

<Blu-ray BOX>
価格:29,040円(税込)
品番:VPXX-72128
仕様:6枚組(本編5枚/特典1枚) 本編映像約450分+特典映像
片面一層/COLOR/16:9/日本語リニアPCM2.0chステレオ/バリアフリー日本語字幕(本編のみ)

<DVD BOX>
価格:22,990円(税込)
品番:VPBX-14259
仕様:6枚組(本編5枚/特典1枚) 本編映像約450分+特典映像
片面一層/COLOR/16:9/日本語ドルビーデジタル2.0chステレオ/バリアフリー日本語字幕(本編のみ)

【映像特典】※Blu-ray BOX、DVD-BOX共通
メイキング、スペシャル座談会、地上絵ができるまで

【封入特典】※Blu-ray BOX、DVD-BOX共通
ブックレット

【先着購入者特典】※Blu-ray BOX、DVD-BOX共通
レイクホテル浅ノ湖キーホルダー ※サイズ:約15×80×厚み5mm

※一部取り扱いの無い店舗もございます。
※特典付与の対象商品については各法人・ECサイトまたは店舗にてご確認ください。
※特典はなくなり次第終了となりますので、予めご了承ください。

出演:市川実日子、角田晃広、鈴木杏、平岩紙、木南晴夏、池松壮亮、菊地凛子、夏帆、坂井真紀、田中直樹、小日向文世
脚本:バカリズム
音楽:fox capture plan
演出:水野格、山田信義、松田健斗
プロデューサー:小田玲奈、小田井雄介、野田健太
チーフプロデューサー:道坂忠久
企画協力:マセキ芸能社
制作協力:ソケット
製作著作:日本テレビ
発売元・販売元:VAP
©︎NTV

関連記事