『バレリーナ』はしっかり『ジョン・ウィック』だった 忠実に守ったシリーズ伝統の魅力

 『バレリーナ』は、まず忠実に『ジョン・ウィック』の魅力を守っている。主演のアナ・デ・アルマスは、『007/ノー・タイム・トゥ・ダイ』(2021年)で、突如として現れて、暴れ回ったあとに消えていく女スパイを演じ、観客に鮮烈な印象を残した人物だ。今回も非常に元気の良い暴れっぷりを見せてくれる。というか、本編の後半はずっと戦いっぱなしであり、ここまでアクションの尺が多いハリウッド映画も珍しいだろう。序盤では韓国アクション映画界のレジェンド蹴撃俳優チョン・ドゥホンと戦い、中盤から舞台が因習村を超えた殺人村になると、本当にずっと戦っている。銃撃戦、格闘、カーアクション、次から次へと大変な戦いっぷりだ。レン・ワイズマン監督らしい「見たことねぇアクションを見せてやるぜ!」魂も健在。手榴弾の投げ合いや、クライマックスの火炎放射機でのタイマンなんかは、ありそうでなかったシーンであり、非常に新鮮だった(個人的に特にワイズマンだったのが、車で走り去ったと思ったら、いきなり車で体当たりされて戻ってくるシーン)。銃も、格闘も、カーチェイスも、どれも非常に面白くて、しっかり『ジョン・ウィック』だったと言えるだろう。

 そしてもう一つの大事な魅力“ビジュアル”も、本作はしっかり満たしている。異常にファッショナブルな黒社会の住民たちに、経営が大変そうなクラブでの大パーティー、暗殺者養成所や武器商人など、これまでのシリーズの定番を押さえてくれている。

 そんなわけで、本作は『ジョン・ウィック』に期待するものが用意されていると言って間違いないだろう。唯一の欠点を挙げるなら、まだ主人公イヴ(アナ・デ・アルマス)のキャラクターが「悲劇の女復讐者」以上に達していないことだ。しかし、この点はシリーズを重ねていけば確実に出来上がっていくはずだ。そもそもキアヌのジョン・ウィックだって、回を重ねるごとに“無敵の殺し屋”→“お疲れモードの無敵の殺し屋”と変化していったのだ。恐らく次あたりでイヴだけの個性が見えてくることだろう。興行収入的にも続編は間違いなくできるだろうから、今後の動きを注視したい。シリーズを蘇らせ、なおかつ続きが楽しみなシリーズに押し上げた。本作の目論見は成功である!

■公開情報
『バレリーナ:The World of John Wick』
全国公開中
出演:アナ・デ・アルマス、ノーマン・リーダス、アンジェリカ・ヒューストン、ガブリエル・バーン、キアヌ・リーブス
監督:レン・ワイズマン
製作:チャド・スタエルスキ
提供:木下グループ
配給:キノフィルムズ
2025/アメリカ/原題:From the World of John Wick: Ballerina
®︎, TM & ©︎ 2025 Lions Gate Entertainment Inc. All Rights Reserved.
公式サイト:ballerina-jwmovie.jp
公式X(旧Twitter):@ballerina_jw
公式Instagram:ballerina_jw

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